おでん

練り製品に「弾力」をつけるリン酸塩と乳化剤

コンビニのおでんを購入するときに原材料を確認する人はいないでしょう。実際、原材料を知る手立てもありませんし。ある老舗の練り製品メーカーの3代目が、大手コンビニチェーンとおでん製品納入の仮契約を結んだときの話です。
その契約には、「仕様」という品質についての取り決めがあり、その中に「練り製品はおでん汁の中で8時間浮いていること」とあった。浮いていないとお客さんが買ってくれないことが理由です。

ところが、三代目はどう作っても8時間浮かせることができません。時間が経つと、汁を吸い込んで鍋の底に沈んでしまうのです。

ほとほと困って同業者に相談すると、「練り製品の弾力や風味をつけるのに、昔ながらにグチなどの小魚を使っているだろうが、それでは8時間は浮かないよ。そんなコストがかかることはやめて、リン酸塩と乳化剤を多めに使えばいい」という答えがあっさりと返ってきたというのです。3代目はかなり迷ったが、そこまで品質を落とすことに抵抗もあり、結局、仮契約を破棄することを決断しました。違約金は数百万円にのぼるのだそうです。

練り製品には原材料表示の義務がないものが非常に多いのです。主原料はスケソウダラのすり身ですが、漁船上ですり身にして、甘味料のソルビットや増量効果もあるリン酸塩を入れても、キャリーオーバー(=原料に添加しても最終食品に影響しない)として表示しなくていいのです。

ただ、3代目は「本当に安心できる食品を提供するのが私たち食品メーカーの社会的使命だと思います」と言いました。こうした社長ばかりなら、食品偽装など起こらないのです。

購入時の注意点

コンビニおでんの練り製品は避けましょう。ちなみにスーパーのパック入りおでんセットは、こんにゃく、シラタキなど水分の多いもので量目を稼いでいるため練り製品が少ないので安心です。練り製品をたっぷり食べたいときは、手作りが安心です。