回転寿司のこのネタはNG
寿司というのは、そもそも江戸時代に流行り始め、完成したものです。関西では押し寿司が主流だったのですが、江戸に伝わってきてから、つまみやすい握り寿司の形となって広まりました。
その握り寿司を当時の江戸の庶民がどのようにして食べていたかというと、屋台だったのです。屋台ですから、ネタにはイワシのように腐りやすい物はあまり使われていませんでした。
マグロでも、トロの部分は脂が酸化して腐敗しやすいので、捨てられていたぐもらいです。そのため、赤身が中心だったということです。それも、保ちをよくするために、醤油と煮切った酒を合わせたような各店秘伝のタレに漬け込んで、「ヅケ」にしてからネタにしていたようです。
ですから、言ってみれば寿司は江戸のファストフードであって、決して高級な食べ物ではありませんでした。当時はあくまで庶民的で便利で気楽な食べ物として人気を博していたのです。
それが今では、寿司がさも高級な食べ物であるかのように成り上がってしまい、途方もなく高級な白木のカウンターを作りつけたり、食事代で1人3万円も5万円も取ったりするような店が平気で出てきました。
それをまた、したり顔で紹介するグあおルメ評論家のような俗っぽい人たちがいたり、さらにそれを煽り立てるようなメディアもあったりで、もう収拾がつかない状態です。
そんな光景を見ると、「笑わせるねぇ。たかが寿司じゃねぇか」という声が聞こえてきそうです。
そういう意味では、いいか悪いかは別として、現代のファストフードとして、回転寿司の形で寿司屋が存在感を増しているのを、私は全面否定しません。
寿司屋が、本来の姿に戻って、より便利に立ち寄れるお店になったのなら、形式としてはそれでいいと思っているのです( ただし、回転寿司の中身については言いたいことがありますけど)。
江戸時代には不可能だったレベルまで衛生管理ができるようになった現代、冷蔵庫など先端の設備をうまく利用することで、きちんとした寿司を回転させ、客が好きなネタを選べるようにするなんて、大変なアイデアです。喜ばしいことです。
むしろ何万円もする高級店のほうが、本来の寿司屋からは遠い存在なのです。それなら高級料亭でもやればいい。ですから、これからは本格的な回転寿司の店ができて欲しいと私は思っているのです。
それはまんざらなくもありません。私の知り合いは西伊豆で回転寿司屋を営業していますが、その母体は地元の魚屋です。魚屋が仕入れたネタを寿司屋でさばいているのです。配膳の機能として回転する寿司のレーンを使っているだけで、いいネタが出てくるのです。
回転寿司としては値段が高めかもしれませんが、1人で3000円分も食べればお腹いっぱいです。西伊豆だからこそできることかもしれませんけれど、それに近いことは、東京や大阪の街中でも本気でやろうと思えばできるのではないでしょうか。
ただ、残念ながら現状ではほとんどの回転寿司は安かろう、悪かろうになっていますので、そのような回転寿司に行かざるを得ない場合に、どのようにネタを選ぶべきかをここでは考えてみたいと思います。
まず、イワシ、アジなどを中心に近海の小魚を選んでください。次に、あまり大きくない魚。天然物のタイ、イサキ、イナダといった物があれば、次なるチョイスとしてはいいと思います。
なるべく遠洋の魚は食べないというのが鉄則。最近はカジキマグロも寿司ネタになっていますが、遠洋で獲れる大型魚を避けたほうがいいのは、水銀、鉛といった重金属による汚染が心配されているからです。
アメリカでは、妊婦、授乳婦に対しては摂取勧告量があるほどです。日本でも農林水産省がホームページなどで注意をうながしてはいるのですけれども、目立たないようにしか出さないので、ほとんど誰にも気づかれていません。
特に妊娠中の方は注意が必要ですし、子どもには食べさせてはいけません。同じ量を食べたとしても、大人のように身体が大きくない子どもへの影響は甚大です。
もう1つ、貝類は食べないほうがいいです。アカガイなどをはじめとして、別種をそう呼んでいる偽物も多いですし、他の魚に比べて鮮度が落ちると当たることが多いので、事故を防ぐためにたいていかなり消毒してあります。
よほど出どころが明確で「○○産の新鮮な物が手に入りました」と表示されているような場合は別として、通常はあまりいい状態ではないと心得て、避けるに越したことはありません。昔は、貝類は傷みやすかったため、なかなか寿司ネタにはなりませんでした。せいぜいハマグリを煮た物ぐらいしかなかったのです。
残念なことですが、海産物は特に放射性物質による汚染も考えなければならない時代になってしまいました。水揚げされた魚介類すべてを検査するわけにもいきませんので、私たちが頼りにできる情報は産地表示だけです。
それも偽装していないことを前提にするしかないのですが。最低でも、東北、関東の沖合で獲れた魚は食べないほうがいいと思います。海はつながっていますから、100%大丈夫と言い切れるところはもうないのですが、紀伊半島から西は比較的安全と踏んでいます。
瀬戸内海、山陰、九州で水揚げされた魚を選ぶようにすることを勧めます。とはいっても、東北で獲って九州の港に水揚げするというような例もあるので、注意は必要です。
広い範囲を回遊する魚は水揚げされた場所だけでは判断できませんので、魚の習性も知っておく必要があります。
例えば、カツオは東北のほうまで北上してから、また南下してきます。四国沖で獲れたとしても、初ガツオはいいのですが、戻りガツオは三陸沖で放射性物質を蓄えてきている危険性が高いので食べないほうがいい。
サンマは、北上したらそのまま戻っては来ませんけれども、北海道で獲れたから大丈夫かというと、途中で汚染地城の三陸沖を通過するわけですからやはり危ないのです。北海道で水揚げしているだけで、獲っているのはほとんど三陸沖です。北海道も、日本海側のほうはまだ安全なのですが、太平洋側はかなり汚染されています。
私はもうサンマは食べません。代わりにイワシ、アジなどを選んでいます。イワシやアジは日本の近海ならほとんどどこでも獲れますので、産地が偽装されることもまずないと思っていい。
相当悪意があれば別ですけれど、近海の小魚であえて偽装しても利益にならないので、偽装する意味がないのです。練り物も小規模な会社の物であれば、だいたい地元産の材料で作られていると考えていいと思います。
材料になる自身の魚は鮮度が重要ですので、わざわざ遠くから輸送費をかけて運んできても高くつくだけですから。昔は北海道のタラをわざわざ取り寄せて練り物に加えたということはありましたが、流通にかかる経費もバカにならないわけで、今は通常はないと思います。
加工食品ですから、むしろ食品添加物のほうが心配です。タラというのはわりと深海にいる魚ですけれども、オホーツク海から下北半島のほうまで来て漁獲されるケースが多く、やはり汚染が心配されます。
それから、ネギトロ、細切りイカの明太子和えとかウニ和えといった加工品、イクラなど魚卵系も避けたいです。回転寿司ではよく養殖のマグロが出てきますが、蓄養というのもあります。稚魚から育てる養殖と違って、蓄養というのは成魚を捕まえてきてエサを与え、大きくすることをいいます。
マグロは泳ぎつばなしという習性があることで有名ですけれど、蓄養だと運動量が少なくなります。加えて、エサに脂肪分を大量に入れるので、全身トロというのか、赤身の部分が全体の20~30%しかない体のマグロが出来中上がるのです。これはもちろん自然に育っていたらあり得ない体なのですが、そのおかげで中トロがたくさん、大トロも取れるわけです。
ところが、狭いところで泳がされるマグロには、傷ができたり、ストレスもかかる句ので、抗生物質のような薬品が大量に投与されています。もはや本来のマグロの味ではなくなっているのです。マグロの中トロを醤油に浸けると、脂が若干散ります。その脂の散り方を見比べてみると、もうわずかしか獲れない本物のマグロの中トロと、蓄養マグロの中トロとでは、脂の散る様子がまったく違います。蓄養のほうが、脂の塊が大きい。
このような品質の物が回転寿司のネタとして出ていくわけです。もしも回転寿司で本物のマグロを扱っている場合は、「天然本マグロ」などと表示があると思います。こういうことであえて嘘をついてもしようがないですから、表示があれば信じてよいと思います。
コハダやサバも、回転寿司できれいにさばいて酢じめにしているところはないでしょうから、別のところで加工された物、すなわち食品添加物まみれの物を使っていると考えたほうがいいでしょう。
アマエビは相当消毒していると思います。ハマチは一般的には養殖物が多いですから、抗生物質や抗菌剤などの薬品の問題があります。ただ、天然物もなくはないので、確認しでみるといいと思います。
結局、イワシ、アジぐらいが安全なのではないでしょうか。イカやタコなども比較的安全かもしれません。回転寿司には衛生上の問題もあります。生魚を大量に扱うので衛生問題はどこの店も苦労しているのですが、事故を防ぐために店中を次亜塩素酸ソーダで消毒したりするのです。
開店前、閉店後など、消毒薬臭くてどうしようもないこともあります。開店直後の、掃除したての店に入ったとき、次亜塩素酸ソーダのにおいがプンプンしていたら、何か理由をつけてでも食べないで出てきたほうが無難かもしれません。まな板など調理用具も次亜塩素酸ソーダを使って消毒するのはマニュアルで指導されていますけれども、においが残るということは、消毒後、きちんと洗浄していないからです。
それはつまり、食材にも薬品が残留したまま提供される可能性があるということです。次亜塩素酸ソーダは人体にとって有害です。もともと殺菌のために体内でもごく微量に作られる物質ではありますが、必要量以上は摂取しないほうがよいのです。致死量がありますから、大量に摂ると死に至ります。においというのも、店選びに重要な要素なのです。
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