もはや工業製品化している「刺身」

刺身というと、生の魚をそのまま調理して出していると考えがちですけれども、実はそうとも限りません。

外食の場合、店のレベルによって本当に様々です。ものすごく高い値段を取る店で出している刺身は、おそらく安全です。

刺身

刺身

当然、そういうところは産地や市場から直送されてきた魚を、店の中でスタッフがさばき、衛生的にさく取りをして刺身を作りますので、その行程はある意味シンプル。何の細工もありませんから、そういう物は安全です。

刺身の鮮度を保つための温度管理とか、いい包丁で刺身の角がきちんと立つようにさばく技術の問題とか、いろいろな要素が他にもありますけれども、やはり、それなりの値段を取る店はきちんとしています。

問題なのは、一般的に私たちがよく利用する居酒屋や和食のチェーン店などで食べる刺身が、必ずしも安全とは言えないことです。生食用の魚介類の扱いに関しては、食品添加物の使用は原則禁止されています。

ですが、事実上は洗浄、殺菌の目的で次亜塩素酸ソーダ、また次亜塩素酸ナトリウムという薬品が使われることがあります。刺身の盛り合わせを頼むと、その中に加工品が入っていることがありますが、それも安全な食品とは言えません。

よくあるのは、小鉢に少し盛られて入っているネギトロ、イカそうめんのような物です。こういう物は、実は仕入れ品だったりします。つまり、工場で加工された食品を店が仕入れて、ただ盛り付けて出しているだけ。

水産加工品と呼ばれるこういった魚の加工品に関しては、食品添加物を使用してもいいという規定があるのです。ですので、刺身の盛り合わせにそういう加工品が入っていたら、そこにはアミノ酸も入り、食品添加物が使われ、様々な処理がされていると考えなければなりませんし、安手のチェーン店の場合には、刺身自体も消毒されている可能性があります。

工場で魚をさばいてさく取りをするときに消毒剤で殺菌し、洗浄した上で真空パックにした物が店に届く。ですから店ではさばく必要はなく、切るだけでいいのです。消毒剤をかけた上に水で流すのですから、おいしくないはずです。

それでもおいしいと思って食べる消費者にも問題があると思います。本当にいい刺身を食べたことがないのか、味が分からない人が多い。サバも、シメサバになった状態で店に届けられる物はかなりの処理がされていると考えたほうがいいでしょう。

本来のシメサバは、さばいたサバの中骨を抜いて塩でしくくめて殺菌し、一度塩分を拭き取ってから酢に潜らせるという工程を経て作るもので、手間がかかります。そんな面倒なことをやるチェーン店は、もうほとんどないと思ったほうがいいでしょう。

また、その技術もありません。スーパーに行くと真空パックに入ったシメサバが売られていますが、あれの業務用が店に届けられるので、店ではパックを解いて切るという作業をするだけです。

真空パックのシメサバは、正確に言うとシメサバではなく、工業的に作られた「シメサバ的なもの」に過ぎません。本来は塩と酢だけで手間をかけて作る物を、食品添加物だらけの調味液に浸けて効率的に作るのですから。

スーパーで売っている刺身のパックを、便利だからと利用する消費者は多いと思います。これらは通常、店内で加工されるのですが、スーパーのバックヤードで加工すると「店内加工」と言って製造者と販売者が同一と見なされます。

そうすると、原材料の原産地だとか食品添加物の有無を記載する義務がなくなるのです。法律でそう決められているのですから記載がなくても問題はないのですが、だいたいそういう盛り合わせの刺身には、食品添加物もさることながら、外国産の魚が使われています。

外国産の魚がいけないと言いたいのではありません。外国産の魚を使って、あたかも日本近海で獲れた魚らしく作られた刺し盛りを、そうと知らずに消費者が買って食べている実態を指摘しています。消費者に対して正直には報告されていないことに、偽装に近い欺瞞を感じるのです。

そこは消費者側も学んで、気をつけて選ぶようにしてもらいたいと思います。消毒剤として使われる次亜塩素酸ソーダは、業界内では略して「次亜(ジア)」と呼ばれています。

スーパーのバックヤードに近づくと、プーンとこの次亜のにおいがするので使っていることが分かります。法律的には希釈の倍率が決まっているのですが、守っているところはほとんどないでしょう。

実際にはものすごく濃い液が大量に使われているのです。食材だけでなく、調理器具や調理台なども全面消毒してから水でザーツと洗い流すのですが、どうしても薬剤が残ってしまうためににおうのでしょう。

こうすると魚自体はおいしくなくなってしまいますが、経営者側からすると、万が一、食中毒が発生したら大損失ですから、やはりその場の安全策を取るのは仕方がないことだと思うのです。

法律上は生の魚に添加物は禁止になっているのですが、消毒が優先されて事実上は守られていないこともあるということです。

菌というのは目に見えない物ですから、本当に分からないのです。出す側からすると、どこまでも安全を追求したいのは人情でしょう。昔の職人はそういうことを全部承知した上で、菌が付着しないような方法を様々工夫して処理をしていたのです。

ですが、それには技術が要るわけです。昔の街中の魚屋では消毒などしませんでしたが、様々な工夫と高度な技術がありました。残念なことに、そうした技術や知恵が伝承されていないのです。

スーパーのスタッフにも高い技術を持っているすごい人がたまにいますが、そのような人ばかりではありませんから、あまり知識もない、技術もないという人にも安全に仕事をしてもらうためには、やはり消毒は必須なのだと思います。

こうした状況も、実は消費者の問題です。従来の魚屋は高い技術までを含めて様々なものを提供していたのですけれども、消費者は安さを求めてスーパーの魚屋でパックに入った刺身を買うようになりました。

スーパーのほうがきれいで安全で、見栄えもよくて、そちらのほうがいいです、と購買という行動を通じて投票してしまったのです。その結果として導かれた現実ですから、これはもう消費者自身が選んだことなので、仕方がないと思うのです。

ですから、私はスーパーが消毒をしたりするのも悪いことだと一概に切り捨てることはできないと思っています。経営者側からすれば、当然やるべきことをやっているに過ぎないのです。

今になって消費者が「そんなことしないでくれ」と言っても、もう遅いのです。技術を持った人がチェーン店などにはいないわけですから。そういう人は技術があるので、当然賃金も高くなります。

ところが、安い人件費のバイトだけで何とか回せる仕組みが考えられてしまったわけです。それは安さを求める消費者のニーズに応えて経営者側が工夫したことですから、今さら「やっぱりもとに戻してくれ」と言われても、急には戻せません。

刺身の安全性を損なうような現実は、実は消費者が作ってきたということです。このままでは嫌だと思うなら、購買という投票行為で自分の意思を改めて表明する必要があります。そうでなければ、現実は変わっていきません。刺身は安全かどうか。食中毒を起こさない、事故を起こさないという側面からだけ見れ.ば安全です。

しかし、それを食べた私たちの身体にとってどうかという側面から見れば安全ではありません、というのが最終的な結論です。

おいしい魚の見分け方

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