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刺身のツマは薬品漬けなので食べない

昔は、一流の和食を出す店では、それこそ修業生の時代に修業の1つとして大根の桂剥きをやらされていました。

大根を薄く剥き、それをシャツシャツと細く切って刺身のツマを作っていたわけです。気の利いた粋な店だと、ミョウガを細かく切った物、アサツキを小口切りにした物、シソの葉を細かく切った物、ニンジンを細く切って糸のようにした物などをそこにバッと混ぜたりしていました。

刺身のツマ

刺身のツマ

今の刺身のツマはだいたい工場で作られています。全部機械が作っていますので、衛生的なことも含め、あらゆる意味で職人が作った物と同じようにはできません。

機械をずっと使い続けますし、異物混入のようなことも、機械を使っている以上0%にはなりません。切り刻んだ物の安全性を高めるために、洗浄もします。

例によって次亜塩素酸ソーダのような薬品も使われてしまいます。ですから、栄養価は洗い流されてほとんどない上に、薬品が混入した刺身のツマが出来上がるのです。それが真空のパックに詰められて店に届きます。

店ではパックからツマをつまんで盛り、シソの葉などを添えるだけ。しかも、添えられるシソの葉も農薬だらけで毒性が強い可能性が高いのです。

ということで、刺身のツマは食べても栄養になりませんし、よほど信頼できる店以外では食べないようにしたほうが賢明です。

刺身のツマというのは、もともと魚の臭みを取ったり、殺菌の目的があったり、意味があって食べられるようになったのですけれども、今やもうその意味もないということです。

これは悲しい現実です。信頼のおける和食の店で職人がきちんと作ってくれたツマは食べる意味があると思いますし、残さずに食べるのが作ってくれた職人への礼儀でもありますので、それは大いに食べて欲しいです。

でも、安手の居酒屋やスーパーで盛られているツマは食べないで欲しい。チャンスがあったらスーパーのバックヤードを覗いてみるといいと思います。

巨大などニール袋に入った刺身のツマが見えることがあります。そこからむしっ「て、白いパックにボンボンと並べる作業をしている場合もあります。そこにペロンとシソの葉が載せられる。

居酒屋でも同じような作業をしています。こういうところに使われているダイコンにしても青ジソにしても、そもそも農作物としてあまり上等な物ではありません。

特にシソの葉は気をつけなければなりません。シソに使われる農薬は、他の野菜よりも強烈なのです。というのも、シソの葉は少しでも虫が食っていたり、葉っぱの先が黒っぼくなっていたりしたら、商品の格段に落ちてしまうからです。束になって折り重なっていて、色も変わらない、虫食いもないという物でなければ仕入れてもらえません。

ですから、シソ作り農家は他の野菜の比ではない量の薬を使います。かなり危険だと思ってください。刺身のツマは添え物的存在ですから、それをありがたがって食べる客はそうそういるわけではありません。

コストの問題から言って、そんなところにお金をかける店はほとんどないと思ったほうがいい。ですから、食べないのが正解ということです。ちなみに私はシソは買いません。自分でプランターで育てたシソと、知り合いの農家が作ってくれたシソ以外は使わないと決めています。

私のプランターには、虫がたくさん寄ってきて食っています。虫が食った後のシソは、確かに見栄えはよくありませんが、毒性があるわけではありません。農薬がかかっている物よりはるかに安全です。素材をきちんと吟味して刺身のツマを作っている店でも、残ってくると使い回したりするような店があって、これまた大問題なのです。

高級料理店でも、素材を吟味していい物を使えば使うほど、残すともったいないという感覚になるのでしょう。いずれにしても、やはり刺身のツマは食べないというのが賢明だと思います。

「土用の丑の日」に騙されない

今、私たちが天然のウナギを食べようと思ったら、相当の苦労が必要だと思ってください。近隣のウナギ屋に行っても、天然のウナギはまず食べられません。天然のウナギを扱う店はたいがい不便な田舎にありますので、そういうところへ出掛けていくしかありません。

天然うなぎ

天然うなぎ

値も相当張ります。消費者に知って欲しいのは、土用の丑の日などというのは根拠もなく大成功したマーケティングの1つだということです。そんな物に乗せられてウナギに群がるのはもうやめましょう。

とにかく消費者にはもっと賢くなってもらいたいのです。ある特定の日だけ急にたくさんウナギが捕まるわけがないのですから、ウナギを食べる日を設けるなどナンセンスです。

今では、年中食べられるウナギですが、天然ウナギはほとんどありません。流通している物のほぼすべてが養殖です。

それも、国内での養殖物は全体の20%程度です。残り80%を占める海外産の多くは中国産や台湾産です。でも、表示は「国内産」となっているケースもあります。

輸入されてから何日聞か国内で飼育してさばくと「国内産」と表示していいとか、いろいろ抜け道的な決め事があるのです。国内産が食べたいと思っていても、表示を盲目的に信じると、本当はそうではない物をつかまされてしまうこともあります。

本当に信頼できる店を探して食べることを勧めます。以前、中国産の養殖ウナギから、食品に含まれてはならない合成抗菌剤エンロフロキサシンが検出されたことがありました。その後、中国産のウナギに対する信頼がいったん落ちて、一時、中国産が品薄になる状況が起こりました。

悪い人がいるもので、中国産を国産と偽装して出していたのが見つかったこともありました。ですが、こういうことは本当に氷山の一角なのです。一匹一匹全部検査することなどできないのですから、表に出ないだけでいくらでも不正は行なわれていると考えたほうがいいでしょう。

もし土用の丑の日などと言って、消費者がウナギに群がって買うようなことがなければ、業者が偽装することもできません。偽装品をたくさん用意したところで売れないと分かっていたら、リスクをを犯してまでそんなことをする必要がなくなってしまいますから。

年に何回かはおいしいウナギを食べたいと思うこともあるでしょう。そういうときは食べればいいのですが、何も、土用の丑の日に皆で一斉に食べなくてもいいはずです。人の好みなんてそんなに一極集中するはずもありません。

今年は土用の丑の日が2回もある、などと煽られて走り回るなんて愚の骨頂。そんな物に振り回されず、冷静に行動するよう訴えたいのです。

良質のウナギをきちんとコンスタントに仕入れて、消費者にいい状態で食べてもらいたいと努力する誠実な業者もたくさんあります。そういう業者を大事にできるような消費行動を賢く守りたいものです。

そういうわけで、中国産のウナギは一時不人気だったのですけれども、最近はまた輸入が増えてきています。消費者に知ってもらいたいのは、中国の生産ラインの環境は日本とはまったく違うということです。

めでたいことに、中国は大変な発展を遂げていて、工業化がどんどん進んでいます。工業化が進むということは、工場での生産が増えているということですから、当然廃液が大量に出ます。その廃液が今の日本のようにきちんと処理がされているなら、まだよしとしましょう。

実際は、北京や上海の大気汚染を見ても分かるように、規制が緩いのです。工場からの排水の規制も、あってなきが如し。流し放題です。そういう廃液が流れ込む先と、ウナギをはじめとする養殖の池が一緒だったりするのです。

巨大な他に廃液が流れ込んでいるのに、その同じ池で養殖することなど、当たり前のように行なわれています。全部が全部そうとは言いませんけれども、中国のかなりの地域で汚染がひどく進んでしまっているというのは周知の事実です。

これはもう、いちいち私たち消費者が現地を見て点検することなどできません。本来は輸入する側の日本の商社や、輸出する側の中国の商社が責任を持って安全性を確認しなくてはならないはずですけれど、商売としてはとにかくお金を儲けたいわけですからそんなことはお構いなしです。

ネガティブな情報をわざわざ出して、「こんな状況なのですけれども買ってください」などと言うわけがないのです。

工場にしても食品を生産するようなレベルになっていないのかもしれません。私たち消費者は、そういうことまできちんと考えた上で自分の食べる物を選択しなくてはなりません。

ウナギに限ったことではありませんが、日本でものすごく人気が出る、そしてある時期集中的に売れてしまう、というのは、業者側からすれば収益もきちんと乗せられる大ビジネスチャンスです。

その象徴としてウナギがあるのです。ウナギをきっかけとして、普段から自分たちが食べている物にきちんとした目を向ける習慣を付けて欲しいと思います。少なくとも、土用の丑の日フィーバーは、バカバカしいと気づいた人からやめましょう。

うなぎ

代替魚のネーミングは問題がいっぱい

代替魚の代表的な物は、例えば「ギンダラ」がそうです。本来なら「タラ」が求められているけれども獲れなくなったために、遠洋の深海で獲れるまったく違う種類の魚を、あたかもタラの一種であるかのように「ギンダラ」と名付けて売っています。

ギンダラ

ギンダラ

このような魚を、総称して代替魚といいます。今ではポピュラーな魚であるギンダラですが、年代によっては子どもの頃は食べたことがなかった人も多いかもしれません。

出始めの頃はかなり安い魚だったのです。要するに、タラが普通にたくさん獲れているときは見向きもされなかったような魚なのです。

タラだけでなく、ニシン、ホッケ、ハタハタなど、大量に流通していた魚が獲れなくなって高級魚になってしまうと、他の魚を獲って売らなければ漁師も生活が成り立たなくなりました。それで、代替魚が売られるようになったのです。

その背景にはいったい何があるのか、消費者も考えなければならないでしょう。たくさん獲り過ぎたために極端に魚が減少してしまったということが背景にあるのです。

それでも、消費者は安い魚を求めるわけです。昔は掃いて捨てるほど獲れたニシンが今や高級魚です。以前なら食べる人もいなかったぐらいのホッケは、居酒屋では大変な人気で、これも高級魚になってしまいました。

それからシシャモもハタハタも少なくなってきましたね。私たち庶民が「おいしいね」と言って食べてきた栄養豊富な魚がどんどん獲れなくなってきているために、安く、庶民レベルで食べられる魚を捷供して欲しい、という庶民の気持ちももちろん分かります。

だからこそ、漁師は遠くまで行って、たくさん獲れた魚を安く提供することになるわけです。結果として代替魚が出てきたのでしょう。ここで、疑問に感じるのは、もともとは違う名前だった魚に「それらしい名前」を付けて売るという行為に対してです。

消費者の勘違いをわざと誘導しているのではないかと感じられるからです。ギンダラがまさにそうです。これは、本物のタラとは何の関係もない魚です。ギンムツというのも、実はムツとは関係ない魚です。

しかし、皆さんは「ギンムツ」なんて言われると、つい煮付けにしておいしいアカムツやクロムツの一種と思われるのではないでしょうか。無理もありません。そういう紛らわしい名前にしてある物が多いのです。

しかも、「ギン」などと言うと、本物のムツよりもランクが上のような印象も与えかねません。それなのに、ムツよりも安いのです。偽装表示とまでは言いませんが、こうしたネーミングには消費者をごまかそうという意図が感じられてしまいます。

アメリカナマズという外来種の巨大な淡水魚が日本の川でも繁殖していて、切り身で売られているのですが、「シミズダイ」「カワフグ」など、もとの姿が想像できないような和名が使われていたことが問題になり、今では使用してはいけないことになっています。

それらしい名前すら付けられずに利用されている魚もあります。ナイルパーチというアフリカ産の大型淡水魚は白身魚としてよく出回っていますが、特に名前も付けられることなく、主に白身魚のフライに加工されて、給食やファストフード、ファミリーレストラン、安価な弁当用フライなどに使われています。スズキの代替魚として回転寿司などでも使われていますが、

スズキとして売ることは禁じられています。それでも、こっそりスズキになっていることもあるようです。

ナイルパーチという本名はどこにも出てきません。回転寿司のアナゴがほとんどチリ産のウミヘビであることはよく知られています。あのウミヘビの味が好きだという人もいるのですから、「ウミヘビ」で売れば問題はないのです。

それを「アナゴ」と言って売ってはいけないと思うのは当然ですよく見ればアナゴとウミヘビは全然違うものです。アナゴは頭の部分を除くとせいぜい20cmか25cmぐらいですので、たいていそれを二個割りにして供します。

ウミヘビはアナゴよりずっと大きいので、二個割りは無理。回転寿司などでは切り身のようになっています。その時点で偽物と分かってしまうのです。

それを「アナゴ」と言って売るのは、消費者を惑わせることになるからやめましょう、と販売する側に言いたいのです。

本当のアナゴを食べたことがある人なら、明らかに違うということが味で分かるので食べなくなると思うのですけれど、知らない人は、それがアナゴなのだと思って食べてしまうかもしれません。

ウミヘビのアナゴは少し臭いです。本当のアナゴは、きちんとした寿司屋では大鍋で静かに炊いて寝かせます。その汁をたっぷり吸わせて、フワッと酢飯に載せ、そうっと握るのです。それがアナゴのおいしさだったのに、知っている人が少なくなり残念です。

偽物がどんな物かが分かる程度には、本物をきちんと食べて欲しいです。これは代替魚と言えるのかどうかギリギリの線でもあるのですけれど、回転寿司などで出てくるエンガワは、本来はヒラメのエンガワであるべきですが、別物です。

安さが売りの回転寿司では、そもそもヒラメを仕入れません。回転寿司で出てくるエンガワは、多くはカラスガレイといわれるカレイの仲間から取った物で、ものすごく脂っぼいのです。エンガワに違いはないのですけれど、偽物です。

ヒラメのエンガワは透明感があって美しいのですが、カラスガレイのエンガワはテラテラ脂で光って白く濁っています。

今や、カラスガレイのエンガワが本物と思っている人のほうが多いのかもしれませんけれど、本来はエンガワと言えばヒラメのエンガワのことだったのです。

1匹の大きなヒラメから4本のエンガワしか取れないので、2二カンで出すと2人分しかできません。そういう希少な物だったのですが、代替魚として大型魚が使われるようになると、エンガワはたくさん取れるようになりました。

はたしてそれが本当に消費者にとってメリットと言えるのでしょうか。私はメリットになっていないと思っているのです。それとも、エンガワでありさえすれば何のエンガワでもよかったのでしょうか。

「とにかく安く食べたい」という消費者の欲求が、こうした代替魚を生んでいるとも言えるわけです。高級な物をとんでもなく安く食べたいと言われても、それは無理な話なのですから。

このような消費者の欲求という需要があれば、そこにつけ込む人間も出てきます。「こんな物があるよ」と似たような物を提供してくるのですけれど、それは本当に消費者にとってよいこととは言えないと思うのです。

それならそれで別物として売るべきでしょう。もちろんそういう物も安全でおいしければ、一概に悪いと断じるつもりはありません。ただ、それまで食べられてこなかった魚には、それなりの理由があるのです。

それは単純においしくないからとか、評価されなかったからとか、いろんな要素があると思うのですけれど、まれに毒性がある場合もあります。

探海に住んでいるカレイなどの仲間の魚に、アブラガレイというのがいますけれども、それは脂分が蝋なのです。ロウソクの蝋。ですから、大量に食べると下痢をしてしまいます。

切り身一切れぐらいでは影響は出ませんので、切り身になって出回っています。でも腸壁に蝋がくつついたりすることもあり得ますから、長期的に摂り続けるのはあまりいいことではありません。

それは、広い意味では毒性があるということにもなります。アブラガレイと聞くと、気持ちが悪くて消費者としては購買意欲が落ちてしまうかもしれませんけれど、アカガレイと言われたら「そういうカレイもいるのか」と納得して買ってしまうのではないでしょうか。

私は、そういう名前の付け方がされていることにも大いに疑問を感じています。消費者がみんな、そうまでして安い魚を食べたいでしょうか。考え方の問題だと思うのですけれど、そうまでして偽物を食べる必要はないのではないでしょうか。

名前が変えられるまやかしとして通用している名前と、売り場やレストランなどに出回っている名前がまったく違っていることもあるというカラクリを知った上で選んでもらいたいと思います。

まぐろを使わないネギトロに注意

もともとは中落ちといって、刺身用の切り身を取った後のマグロの骨に付いた身を、こそげ取って食べていたのがネギトロの発祥です。

ネギトロ

ネギトロ

寿司屋で修業している若い店員がいきまかないで食べさせてもらっているのを、粋がった馴染みの客が所望して、おいしいじゃないか、ということになったのでしょう。

下品で安価な食べ物だったのが、いつの間にか高級品になり、今また廉価な物になってきています。というのも、もう材料にマグロは使われていないからです。

ネギトロの問題は、マグロだと思われている原材料にマグロが使われているとは限らないところです。代わりに、普通はあまり食べられないアカマンボウという魚が使われているケースがあるのです。

もちろん本物の中落ちを使ってまともにネギトロを作っている店もありますけれども、一般的に、1皿百数十円というようなレベルの回転寿司屋で、マグロのすき身をきちんと叩いて軍艦巻きに載せて出しているとは考えられないのです。

消費者は、そういうところではそれなりの物しか出ないと分かった上で選ぶ必要があると思います。

アカマンボウはマグロのようにはおいしくないので、食品添加物を大量に入れて食味が整えられます。ネットリ感を出すために、ショートニングが入れられたり、つい十数年前までは豚の脂(ラード) まで使われていました。

本物のマグロが材料なら、わざわざ脂を足す必要はないのです。中落ちは骨の際なので、もともと脂っぼいのですから。

あとはアミノ酸です。タンパク加水分解物といわれるものがたっぷり入っています。原材料の昧が悪いので、アミノ酸を加えておいしいと感じさせてしまう方法を取るわけです。

こうしてネギトロらしく整えられた物が真空パックになって店に届くシステムです。回転寿司に行く人たちの多くは、中落ちを使った本当のネギトロのおいしさを知らないのではないでしょうか。

私が子どもの頃育った商店街には何軒も魚屋があり、小型とはいえマグロをきちんと1本さばいたりしていました。頼んでおくとすき身を取つておいてくれたのですが、それはそれはおいしかったものです。

その味を知らないから、アカマンボウで作られた物でも「これがネギトロです」と言われれば、ネギトロとはこういう物なのだろうと納得してしまうのかもしれません。

できれば一度、きちんとした中トロや赤身を叩いて、ネギ、ショウガを加え、自分で作って食べてみるといいと思います。その違いは歴然としていますので、どなたにも分かっていただけるはずです。

マグロの刺身

もはや工業製品化している「刺身」

刺身というと、生の魚をそのまま調理して出していると考えがちですけれども、実はそうとも限りません。

外食の場合、店のレベルによって本当に様々です。ものすごく高い値段を取る店で出している刺身は、おそらく安全です。

刺身

刺身

当然、そういうところは産地や市場から直送されてきた魚を、店の中でスタッフがさばき、衛生的にさく取りをして刺身を作りますので、その行程はある意味シンプル。何の細工もありませんから、そういう物は安全です。

刺身の鮮度を保つための温度管理とか、いい包丁で刺身の角がきちんと立つようにさばく技術の問題とか、いろいろな要素が他にもありますけれども、やはり、それなりの値段を取る店はきちんとしています。

問題なのは、一般的に私たちがよく利用する居酒屋や和食のチェーン店などで食べる刺身が、必ずしも安全とは言えないことです。生食用の魚介類の扱いに関しては、食品添加物の使用は原則禁止されています。

ですが、事実上は洗浄、殺菌の目的で次亜塩素酸ソーダ、また次亜塩素酸ナトリウムという薬品が使われることがあります。刺身の盛り合わせを頼むと、その中に加工品が入っていることがありますが、それも安全な食品とは言えません。

よくあるのは、小鉢に少し盛られて入っているネギトロ、イカそうめんのような物です。こういう物は、実は仕入れ品だったりします。つまり、工場で加工された食品を店が仕入れて、ただ盛り付けて出しているだけ。

水産加工品と呼ばれるこういった魚の加工品に関しては、食品添加物を使用してもいいという規定があるのです。ですので、刺身の盛り合わせにそういう加工品が入っていたら、そこにはアミノ酸も入り、食品添加物が使われ、様々な処理がされていると考えなければなりませんし、安手のチェーン店の場合には、刺身自体も消毒されている可能性があります。

工場で魚をさばいてさく取りをするときに消毒剤で殺菌し、洗浄した上で真空パックにした物が店に届く。ですから店ではさばく必要はなく、切るだけでいいのです。消毒剤をかけた上に水で流すのですから、おいしくないはずです。

それでもおいしいと思って食べる消費者にも問題があると思います。本当にいい刺身を食べたことがないのか、味が分からない人が多い。サバも、シメサバになった状態で店に届けられる物はかなりの処理がされていると考えたほうがいいでしょう。

本来のシメサバは、さばいたサバの中骨を抜いて塩でしくくめて殺菌し、一度塩分を拭き取ってから酢に潜らせるという工程を経て作るもので、手間がかかります。そんな面倒なことをやるチェーン店は、もうほとんどないと思ったほうがいいでしょう。

また、その技術もありません。スーパーに行くと真空パックに入ったシメサバが売られていますが、あれの業務用が店に届けられるので、店ではパックを解いて切るという作業をするだけです。

真空パックのシメサバは、正確に言うとシメサバではなく、工業的に作られた「シメサバ的なもの」に過ぎません。本来は塩と酢だけで手間をかけて作る物を、食品添加物だらけの調味液に浸けて効率的に作るのですから。

スーパーで売っている刺身のパックを、便利だからと利用する消費者は多いと思います。これらは通常、店内で加工されるのですが、スーパーのバックヤードで加工すると「店内加工」と言って製造者と販売者が同一と見なされます。

そうすると、原材料の原産地だとか食品添加物の有無を記載する義務がなくなるのです。法律でそう決められているのですから記載がなくても問題はないのですが、だいたいそういう盛り合わせの刺身には、食品添加物もさることながら、外国産の魚が使われています。

外国産の魚がいけないと言いたいのではありません。外国産の魚を使って、あたかも日本近海で獲れた魚らしく作られた刺し盛りを、そうと知らずに消費者が買って食べている実態を指摘しています。消費者に対して正直には報告されていないことに、偽装に近い欺瞞を感じるのです。

そこは消費者側も学んで、気をつけて選ぶようにしてもらいたいと思います。消毒剤として使われる次亜塩素酸ソーダは、業界内では略して「次亜(ジア)」と呼ばれています。

スーパーのバックヤードに近づくと、プーンとこの次亜のにおいがするので使っていることが分かります。法律的には希釈の倍率が決まっているのですが、守っているところはほとんどないでしょう。

実際にはものすごく濃い液が大量に使われているのです。食材だけでなく、調理器具や調理台なども全面消毒してから水でザーツと洗い流すのですが、どうしても薬剤が残ってしまうためににおうのでしょう。

こうすると魚自体はおいしくなくなってしまいますが、経営者側からすると、万が一、食中毒が発生したら大損失ですから、やはりその場の安全策を取るのは仕方がないことだと思うのです。

法律上は生の魚に添加物は禁止になっているのですが、消毒が優先されて事実上は守られていないこともあるということです。

菌というのは目に見えない物ですから、本当に分からないのです。出す側からすると、どこまでも安全を追求したいのは人情でしょう。昔の職人はそういうことを全部承知した上で、菌が付着しないような方法を様々工夫して処理をしていたのです。

ですが、それには技術が要るわけです。昔の街中の魚屋では消毒などしませんでしたが、様々な工夫と高度な技術がありました。残念なことに、そうした技術や知恵が伝承されていないのです。

スーパーのスタッフにも高い技術を持っているすごい人がたまにいますが、そのような人ばかりではありませんから、あまり知識もない、技術もないという人にも安全に仕事をしてもらうためには、やはり消毒は必須なのだと思います。

こうした状況も、実は消費者の問題です。従来の魚屋は高い技術までを含めて様々なものを提供していたのですけれども、消費者は安さを求めてスーパーの魚屋でパックに入った刺身を買うようになりました。

スーパーのほうがきれいで安全で、見栄えもよくて、そちらのほうがいいです、と購買という行動を通じて投票してしまったのです。その結果として導かれた現実ですから、これはもう消費者自身が選んだことなので、仕方がないと思うのです。

ですから、私はスーパーが消毒をしたりするのも悪いことだと一概に切り捨てることはできないと思っています。経営者側からすれば、当然やるべきことをやっているに過ぎないのです。

今になって消費者が「そんなことしないでくれ」と言っても、もう遅いのです。技術を持った人がチェーン店などにはいないわけですから。そういう人は技術があるので、当然賃金も高くなります。

ところが、安い人件費のバイトだけで何とか回せる仕組みが考えられてしまったわけです。それは安さを求める消費者のニーズに応えて経営者側が工夫したことですから、今さら「やっぱりもとに戻してくれ」と言われても、急には戻せません。

刺身の安全性を損なうような現実は、実は消費者が作ってきたということです。このままでは嫌だと思うなら、購買という投票行為で自分の意思を改めて表明する必要があります。そうでなければ、現実は変わっていきません。刺身は安全かどうか。食中毒を起こさない、事故を起こさないという側面からだけ見れ.ば安全です。

しかし、それを食べた私たちの身体にとってどうかという側面から見れば安全ではありません、というのが最終的な結論です。

おいしい魚の見分け方

日本人はマグロを食べ過ぎている

マグロは乱獲が続いているために、漁獲量が年々減少の一途をたどっていることが大問題になつています。

日本人はマグロが好きで、世竺マグロを食べる国民と言われていますけれども、それだけ消費量が多いのです。私が問いたいのは、「そんなにたくさんマグロを食べる必要がありますか?」ということです。昔は、マグロの刺身はそれなりに高級な食べ物でした。ですから、それほど頻繁に食べませんでしたし、そもそも大量に食べる物でもなかったのです。

ところが、漁業技術が進歩して無理をすれば大量に獲れた時期があったものですから、昨今はマグロが安く出回るようになり、そのために日本人全体がマグロを食べ過ぎるようになったと思うのです。

 

「ここらへんで自重しませんか? 」という提案をしたいのです。そんなにたくさん食べなくてもいいはずですから。

昔から、メジマグロといって、漁をするとホンマグロの子どもがある程度かかるのですが、かかれば獲って食べていました。でも、今はわざわざメジマグロを獲りに行ってしまうのです。「それはやめましょうよ」と言いたい。放っておけば、成長してホンマグロになるのですから。これは乱獲をしている漁師の責任とばかりは言えません。

まぐろ

まぐろ

「安い物を大量に食べさせろ」という消費者の強欲が、この結果を生んでいるのです。マグロの刺身なら、≡ 切れか四切れあれば十分のはずです。もっと自覚を持って食べるようにしなければ、マグロに限らず、海洋生物を人間が食い尽くすことになってしまいます。もちろん、環境に与える影響といった観点でこの間題を考えることも大事なのですが、そんなことより何より、そんなに強欲に食べてどうするのかという根本を、人の生き方として考えるべきでしょう。

適量というものを知らなければなりません。私たちは長い間、無自覚に海からの贈り物を無駄にしたり、食べ過ぎたりしてきました。そろそろ、そういう生き方をやめなければならない時機に差し掛かっていると思うのです。皆さんは、少なからず「食」に関心を持っている人たちだと思います。これはまず、そういう自覚のある人たちから始める以外にないのです。それが少しずつ広がって、力を持つようになるといいと思っています。

マグロの刺身