腎臓を壊してしまう大腸菌

副作用のない健康増進薬のような薬物の作用は、誰でも似たりよったりの効果しか出ませんが、副作用の強い薬物も含めて毒物はにさまぎまな症状があらわれます。
毒性の発現部位が特定の臓器に集中するときは、心臓毒、肝臓毒、腎臓毒などとも呼ばれます。
しかし、臓器障害に先立って消化器障害や呼吸器障害などが現われることは少なくありません。
また、同じ毒物でも急性中毒の症状と慢性中毒の症状が異なってきます。一方、O-157染症の治療が難しいのは、抗生物質を使って菌を死滅させると、そのとき大量のベロ毒素を出すことにあります。ベロ毒素とは、人体に尿毒症を起こさせたり、慢性腎不全を引き起こしたりするタンパク質です。
初期症状として下痢や腹痛がみられ、大腸菌という名前がつくので、消化器にダメージを与える病原菌と思われがちですが、本当の恐ろしさは腎機能を破壊することにあるのです。
人体の症状には、単純な因果関係やイメージではとてもとらえきれない禎雑な局面があるのです。

毒の作用(薬物も含めて) を根本的・包括的に理解するためには、毒を大きく神経毒・血液毒・細胞毒の3タイプに分け、60兆の細胞からなる人体を一つの巨大都市とみなし、毒の発現をその都市災害になぞらえてみると理解しやすいでしょう。

  • 神経毒…中枢神経系や末梢神経系はいわば人体内部で高度に発達した情報通信ネットワークです。この一部に異変が起きただけでも、人体の機能が瞬時にマヒしたり、パニックに陥ってしまいます。サリンのような神経ガスが瞬時に作用するのも神経毒だからです。有機リン系農薬の多くもサリンと同様の急性・慢性中毒症状を示します。
  • 血液毒…巨大都市の24時間休むことのない物流システムを破壊するように作用します。マムシやハブの毒は血液毒です。また、ペニシリン、ストレプトマイシンなどの抗生物質の一部は、赤血球の細胞膜を破壊して、溶血性貧血を起こしたりします。
  • 細胞毒…巨大都市・人体の働き手である細胞を攻撃する毒。たとえば、農薬のパラコートは強い酸化作用で細胞を破壊し、ダイオキシンはDNAを破壊して強い発ガン性を示します。界面活性剤による皮膚障害や消化器障害も細胞毒性によるものです。

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