大腸菌 腎臓 を壊してしまう理由

07/02/2025

大腸菌 腎臓
大腸菌 腎臓

大腸菌 腎臓 を壊してしまう理由について紹介します。私たちの体内に存在する無数の微生物の中で、大腸菌は一般的に腸内細菌として知られています。しかし、この身近な細菌が、時に腸を飛び出して腎臓に深刻な影響を及ぼすことがあるのをご存知でしょうか?

大腸菌 腎臓 を壊してしまう理由

尿路感染症の主要な原因菌である大腸菌は、その感染が上行性に腎臓に達すると、腎盂腎炎と呼ばれる重篤な炎症を引き起こす可能性があります。

腎盂腎炎は、発熱や背部痛といった全身症状を伴い、適切な治療がなされない場合、腎機能の低下や、場合によっては敗血症といった命に関わる状態へと進行することもあるのです。

腎臓は、体内の老廃物や余分な水分をろ過し、血液の組成を正常に保つという生命維持に不可欠な役割を担っています。それゆえに、大腸菌による腎臓へのダメージは、全身の健康状態に重大な影響を及ぼしかねません。

副作用のない健康増進薬のような薬物の作用は、誰でも似たりよったりの効果しか出ませんが、副作用の強い薬物も含めて毒物はにさまぎまな症状があらわれます。

毒性の発現部位が特定の臓器に集中するときは、心臓毒、肝臓毒、腎臓毒などとも呼ばれます。
しかし、臓器障害に先立って消化器障害や呼吸器障害などが現われることは少なくありません。

また、同じ毒物でも急性中毒の症状と慢性中毒の症状が異なってきます。一方、O-157染症の治療が難しいのは、抗生物質を使って菌を死滅させると、そのとき大量のベロ毒素を出すことにあります。ベロ毒素とは、人体に尿毒症を起こさせたり、慢性腎不全を引き起こしたりするタンパク質です。

初期症状として下痢や腹痛がみられ、大腸菌という名前がつくので、消化器にダメージを与える病原菌と思われがちですが、本当の恐ろしさは腎機能を破壊することにあるのです。

人体の症状には、単純な因果関係やイメージではとてもとらえきれない禎雑な局面があるのです。

毒の作用(薬物も含めて) を根本的・包括的に理解するためには、毒を大きく神経毒・血液毒・細胞毒の3タイプに分け、60兆の細胞からなる人体を一つの巨大都市とみなし、毒の発現をその都市災害になぞらえてみると理解しやすいでしょう。

  • 神経毒…中枢神経系や末梢神経系はいわば人体内部で高度に発達した情報通信ネットワークです。この一部に異変が起きただけでも、人体の機能が瞬時にマヒしたり、パニックに陥ってしまいます。サリンのような神経ガスが瞬時に作用するのも神経毒だからです。有機リン系農薬の多くもサリンと同様の急性・慢性中毒症状を示します。
  • 血液毒…巨大都市の24時間休むことのない物流システムを破壊するように作用します。マムシやハブの毒は血液毒です。また、ペニシリン、ストレプトマイシンなどの抗生物質の一部は、赤血球の細胞膜を破壊して、溶血性貧血を起こしたりします。
  • 細胞毒…巨大都市・人体の働き手である細胞を攻撃する毒。たとえば、農薬のパラコートは強い酸化作用で細胞を破壊し、ダイオキシンはDNAを破壊して強い発ガン性を示します。界面活性剤による皮膚障害や消化器障害も細胞毒性によるものです。

1. 尿路感染症から腎盂腎炎への進行

これは大腸菌が腎臓を損傷する最も一般的な経路です。

  • 上行性感染: 大腸菌は通常、私たちの腸内に生息している常在菌です。しかし、これが何らかの理由で尿道から侵入し、膀胱で増殖すると膀胱炎を引き起こします。特に女性は尿道が短く、肛門と尿道口が近いため、大腸菌が侵入しやすい傾向があります。
  • 炎症の波及: 膀胱炎の細菌が、尿管を逆行して腎臓の腎盂(腎臓で作られた尿が集まり尿管につながる部分)まで達すると、腎盂腎炎という腎臓の炎症を引き起こします。
  • 腎組織の直接的な損傷: 腎盂腎炎になると、大腸菌が腎臓の組織内で増殖し、炎症反応を引き起こします。この炎症が腎臓の実質(尿をろ過するネフロンを含む部分)にまで広がると、腎臓の細胞や組織が直接的にダメージを受けます。炎症が長引いたり、重症化したりすると、腎臓の機能が低下し、最終的に慢性腎臓病や腎不全へと進行する可能性があります。細菌が産生する毒素や、宿主の免疫反応によって引き起こされる炎症が、腎臓の細胞を破壊したり、血流を阻害したりすることが損傷のメカニズムとして考えられます。

2. 腸管出血性大腸菌による溶血性尿毒症症候群(HUS)

特定のタイプの大腸菌は、より深刻な形で腎臓にダメージを与えることがあります。

  • 志賀毒素(ベロ毒素)の産生: O157やO26、O111といった特定のタイプの腸管出血性大腸菌は、体内で志賀毒素(Stx)、別名ベロ毒素と呼ばれる強力な毒素を産生します。
  • 毒素の全身への拡散: この志賀毒素は、腸管から吸収されて血液中に入り、全身を巡ります。
  • 微小血管の損傷と血栓形成: 志賀毒素は特に腎臓の血管(微小血管)の内壁の細胞に結合し、これを損傷します。これにより、血管内で小さな血液の塊(血栓)が形成されやすくなります。
  • 腎臓の機能障害: 形成された血栓が腎臓の毛細血管に詰まると、血液のろ過機能を持つ腎臓の糸球体への血流が阻害されます。これにより、腎臓が老廃物をろ過したり、尿を生成したりする能力が急激に低下し、急性腎不全を引き起こします。
  • 赤血球の破壊(溶血): 血管内で形成された血栓に赤血球が衝突することで、赤血球が破壊されます(溶血)。これにより溶血性貧血が生じます。
  • 血小板の減少: 血栓が形成される過程で血小板が大量に消費されるため、血小板減少も引き起こされます。

これら「溶血性貧血」「血小板減少」「急性腎不全」の3つの症状が同時に起こるのが溶血性尿毒症症候群(HUS)であり、特に小児や高齢者で重症化しやすく、生命に関わることもある非常に危険な状態です。

まとめ

つまり、大腸菌が腎臓を壊す主なメカニズムは、尿道から腎臓へ直接侵入し炎症を引き起こす腎盂腎炎と、特定の毒素を産生して全身の血管、特に腎臓の微小血管を損傷する溶血性尿毒症症候群の2つです。どちらの経路でも、腎臓の正常な機能が阻害され、腎機能低下や腎不全に至る可能性があるため、早期の診断と治療が非常に重要となります。

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