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現代日本の食事事情

アメリカの同年代より高いわが国青少年のコレステロール値

国民栄養調査の結果を見て、いくら食事の欧米化といってもわが国のそれはまだそれほどではないと思う人もいそうです。
現代病と食生活の関連性
数字だけを見るとそんな「錯覚」にとらわれる人もいそうです。
しかし、われわれは統計の平均を食べているわけではありません。

何年か前に全国を9地区に分けて2万5000人の食事を調べたある調査は、こんな指摘をしていました。「20~40代の食事は脂肪が多く、大阪の事務系グループは全体のカロリーの49.2% しかでんぶん質をとっていませんでした。

東京都目黒区の区役所の職員グループでは54.3% 、秋田県本庄市の市役所の職員グループは50.4%でした。

マクガンレポートでは世界中のデータを調べて、全力ロリー中でんぶん質が最低でも65% ぐらいはとられているような食生活でないと健康ではないとしています。

これからすると平成10年の国民栄養調査の結果は、総平均でも60%を割っていて動物性食品型に傾き過ぎているし、いまの調査が指摘しているグループなどは論外ということです。

しかし、若い年代になるほどそんな食事傾向です。

東京都内の中・高校生9000人を調査した博士と一緒にあるテレビ番組に引っばり出されました。博士の調査は、アメリカの同年代と同じかそれ以上に日本の若者たちのコレステロール値が高いことを最初に明らかにしてショッキングな話題となった調査でした。

博士は「学校給食などが動物性脂肪に偏っているのも一因で、また学校給食がそうなっているのは予算の関係で安い動物性脂肪ばかりを使うからでしょう。
学校給食にしてこうだとすれば、街に出回っている油脂をつかった加工食品、菓子などがどうなっているかは想像しただけでわかります。

商品となれば「低コストに傾く」は当然の企業論理です。

さらにマクガンレポートに1つのショッキングなデータが出されていました。今から半世紀も前の朝鮮戦争の戦死者を解剖したアメリカ軍医務当局のデータでした。

「20代のアメリカ兵士たち(平均年齢22歳)は45%がすでにかなり動脈硬化が進行していました。さらに5%ははっきり心臓病の兆候を見せていました。

しかし、同年齢の韓国兵士はそうではありませんでした。カナダ政府のマクガンレポートより10年前のレポートはこう述べていました。

「35歳からすでに心臓病死がその年代の死亡の5%以上を占めるようになっています」30代で心臓病で死んだ知り合いがいるなんて人も近頃では少なくないのではないでしょうか。日本でもすでにそうなっているからです。

わが国は辛か不幸か第二次大戦後は長く平和を享受しています。だから朝鮮戦争のアメリカ兵のようなショッキングなデータは、若い「日本軍兵士」に関しては出されていません。しかし、もしそうでなかったら同じようなデータが出されていそうです。

まだ危険な領域にはまだ?

いま述べたような状況では、とてもまだ「そんなになっていない」などとはいえません。対応の遅いわが国が昭和60年になってやっと「健康づくりのための食生活指針」というガイドをつくったのもこのような状況からです。

この中では脂肪をとり過ぎるなといったように、さすがに食事欧米化の危険に対する警告も盛られています。しかし国は、ガイドをパンフレットにして出せばこと足りるとでも思っているようにしか考えられないのです。

もっと声を大にして、国民に正しい食事による健康増進や病気予防を説くのでなければまるで意味はないのです。第一こんなガイドを厚生労働省がつくったことさえ、どれだけの人が知っているのでしょうか。

厚生労働省もまだ「そんなになっていない」とでも思っているみたいです。それは現在の厚生労働省も同じです。

わが国の現在の状況をどう見るかという問題が、わが国の場合にはとくに大切なはずです。「死亡率の世代間での逆転」という非常に珍し統計に、世界の学者たちが前代未聞だと不思議がったという話があります。他の先進諸国が半世紀以上かけて食事を欧米化させたのに、わが国ではその3分の1あるいは2分の1以下の時間で同じことをしたということもありました。ことほどさようにわが国の状況を見る場合には、それを正確に見るための、やや特別な注意が必要です。そしてそういう視点は1つ1つの細かい事実を云々すること以上に重要です。

すでに大腸ガンは胃がんを上回っている

肺ガン、肝臓や膵臓のガン、大腸ガンは急増しています。そして近い将来、肺ガンや大腸ガンは胃ガンを抜くだろうといわれています(すでに男子の肺ガンはすでに胃ガンより多数)。

アメリカの同年代よりコレステロール値が高い日本の10代が、その結果が形になって現われる頃には、心臓病死で日本がアメリカ以上になりそうです。しかし本当の現実、現在進行中の事態では、もう前出のガンや心臓病死は胃ガンを抜いたりアメリカの心臓病死を追いこしている可能性は大ありです。というのも大腸ガンなどが胃ガンを抜くとか抜かないとかいう議論は、これらの病気による死者の数を問題にしてなされている議論であるが、ガン、心臓病その他の成人病は、悪い食生活のつけが2~30年も蓄積した結果として出てくるものだからです。それゆえ死亡者数を扱う死亡統計とは、実は20年も前の過去の事実を示す統計に過ぎず、まだ表面化していない現在進行中の事態を示すものではないからです。

これは逆にいえば、何年か後に胃ガンを抜くといわれている大腸ガンなどは、現在進行中の事態としてはもう抜いているということになります。つまり胃ガンの予備軍を大腸ガンなどの予備軍はもう抜いているということであり、本当に問題にすべきはそっちの事実のはずです。

死亡者の数を云々して死んだ子の年ならぬ「数」を数えても何の意味もないのです。これに対し、予備軍ならまだ正規軍に登用される以前に、登用されないための方向転換も可能です。

死亡者の数を問題にする統計に振り回されてまだ大腸ガンなどが胃ガンより少ないなんて考えるより、より意味のある事実を問題にするほうが利口な人間のすることです。そしてそういう事実のほうでいえば、すでに胃ガンを大腸ガンなどが抜いていたり、日本の心臓病死はアメリカの心臓病死を追いこしたりしていて、もう「そうなっている」のです。

平均寿命にはトリックがある

マクガンレポートでは、カナダ政府も平均寿命統計なんて意味がないだけではなく、現実を見誤らすだけのものだから廃止したほうがいいと吐き捨てました。

平均寿命が延びたといって大騒ぎするので、善良な国民は健康になったように錯覚してしまいます。平均寿命というのは、具体的には、ゼロ歳児があと何年の余命を期待できるかという数字です。この数字の算出法自体が、ただの数字遊びで何の意味もないことは今は措くとしても、つぎのような数字を読者はどう思うでしょうか?

男子の場合、明治20年代頃の平均寿命(ゼロ歳児の平均余命) は42.8年でした。これが平成12年では77.64年だから三34.84年延びました。確かに大変な延びです。ところで、

では同じ期間にたとえば50歳の人の平均余命はどうだったかというと、明治20年代に18.8年だったのが平成12年に29.82年になり、11.02二年延びただけです。

昔だったら死んだ病人もいまではなんとか命だけは取り止めるという医学的手段は進んでいます。また戦争などその他の事情も考えれば、これでは本当に寿命が延びて健康になったのだとはいえず、このくらいの数字では、実質的には逆に寿命は縮まったのだと考えたっておかしくないくらいのものです。

では多くの学者が平均寿命紹介の意味のなさを訴えたが、たとえば「平均寿命が延びたかに見えるのは、ただ新生児死亡が激減したからに過ぎないのです。それにわれわれは幻惑されています。だから、新生児の平均寿命は延びたが成人の場合には1940年から数十年の間で、たとえば20歳の男子で2年強、女子で6年強しか延びていないのです。

アメリカでは数十年で数年、日本では明治以来の100年余りで10年余りの延びというのが成人の場合です。しかも新生児の場合だって平均寿命なんてのは彼らに全く関係のない他人の数字を計算上無理に当てはめてつくられた数字マジックということになります。

多くの人は平均寿命が延びたといわれると、では健康になったのかと錯覚してしまいます。そして一方では有病率(人口当たりの病人の率)は年々上昇し医療費も増大する一方です。
さらに、平均寿命世界一なんてばか騒ぎをしている日本は、世界一寝たきり老人や要介護老人の多い国で、アメリカの4倍もの高率です。これをマンガチックに表現すればつぎのようにいえます。

元気な老人がごろごろいたかつてのアメリカでも、またかつての日本の長寿村でも80~90代の元気な老人の腕はくわを振って田畑で現役で働いていたのです。しかし、いまの日本では老人たちの青白い腕は、ベッドの中で平均寿命という無意味な数字だけをやっと支えているだけです。

問題は表面の数字でなく数字の中味です。「統計でウソをつく方法」本がありますが、統計の中味を見ないと統計はすぐウソをつくものです。

ついでなので一言つけ加えておく。一般には経済成長はいいことだと考えられています。しかし、国民所得の数字なんてのは本当は味噌もクソもー緒にした粗雑な数字です。

病気になって医者や製薬会社に金を払えば、それは国民所得の計算上プラスに計算され、医療費の増大の分だけ経済成長がプラスされたことになるのです。

食品添加物の害が説かれていますが、こういうものの生産もやはり経済成長に数字上では貢献しているのです。病気や不健康になって経済成長に貢献したのではあまり意味はありません。

平均寿命の統計なんてのもこれと同類項です。数字の中味をしっかり仕分けして統計にウソをつかれないようにしなければいけません。

破れて死ぬか詰まって死ぬか、脳出血と脳梗塞の教訓

脳の血管が破れる日本型脳卒中の脳出血は確かに激減しており、昭和26年に比べ58年頃には半減、平成叫10年ではそれよりさらに25% ほど減少しました。これに対し脳の血管が詰まる欧米型脳卒中の脳梗塞は、昭和26年から平成10年の間に数で25倍にも増加しました。この事実はわれわれに多くのことを教えています。

脳出血を減らしたのはいい、しかし脳出血を減らし同時に脳梗塞を増やさない方法はなかったのか、つまり脳出血にも脳梗塞にもならないという一番いい道はなかったのかということを誰でも考えるでしょう。

その道は塩の多さだけを別にすれば、基本的には日本型食生活を守りつつ穏健な栄養改善を進める道だったのだと思えます。
脳出血は減らしたがそれ以上に脳梗塞を増やしたのは、食事が欧米化と栄養の過剰の道を同時にたどったからでしょう。

破れるほうの脳出血は一口でいえば栄養不足で起きます。蛋白質の不足などで脳の血管が弱ければ破れるからです。これに対し詰まるほうの脳梗塞は、過剰な栄養が脳の血管を詰まらせて起こります。破れもせず詰まりもしないためには、要するに過剰にも不足にもならない「腹八分の栄養」がいいのです。
現代人には粗食がベストぐらいの調節が必要なのかもしれません。

コレステロールもそのレベルが高過ぎれば詰まるし、低過ぎれば血管はもろくなって破れるといわれるように、高過ぎず低過ぎずがいいのと同じです。

脳出血は国民全般の栄養水準の向上の中で激減しました。しかし、その減少以上に脳梗塞を増やしたということは要するに過度な欧米化、過度な栄養改善(過度であれば正確には栄養改悪だが)の結果です。

これに対し日本型食生活の中で穏健に、つまり腹八分に栄養改善が進んでいたら、われわれは破れも詰まりもしないでこられたに違いありません。

脳出血が多かった昭和20年代はご存知の食糧難の時代でした。これに対し脳梗塞の多い現在は飽食の時代です。栄養は腹八分のバランスが大切ということを、減った脳出血と増えた脳梗塞がよく教えてくれています。

現代人特有の病気は、腹八分目にしてよく噛んで食べれば防げるものばかりです。