ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)

DDTは19世紀の後半にはすでに合成されていましたが、1938年以降、殺虫剤として大量に使用されました。日本では戦後にしらみをとるために頭からかけられた人もいたようです。日本では1969年12月にDDTの製造が、1971年には使用も禁止されています。
それまで農薬として使用されてきたDDTは食物連鎖の過程を経て、どうしても人間の体内に入り込んでしまいました。これを裏付けるように地球上のあらゆるところでDDTが検出されるようになりました。

こうした化学物質は、北極や南極でも検出されています。北極の場合には、シロクマから、南極の場合にはペンギンの体内から見つかっています。DDTの汚染は地球上のあらゆる地域にまで広がっているのです。そしてこのDDTが環境ホルモンであることも判明しました。

DDTが肝臓に存在している酵素の構造を変化させる作用があることが発見されています。また、DDTの作用が、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロンといった性ホルモンの構造や分泌を変化させることもわかってきました。そして性ホルモンの代謝を変化させることで、生殖に影響を与えているのです。

DDTの問題点は、自然界では簡単に分解されないことです。半減期がほぼ100年といわれるだけに長い間残ってしまうのです。この高い蓄積性が問題となっています。さらに脂肪と結合しやすい性質をもっているので、体内の脂肪組織にとけ込み、蓄積されてしまうのです。

ジエチルスチルベストール(DES)

ジエチルスチルベストールは、卵細胞や胎盤で生成される「エスロゲン」という女性ホルモンと同様の働きをします。1960年代の後半にアメリカで流産防止用として使われた合成女性ホルモンです。
1970年頃、思春期を過ぎた年頃の若い女性の間に膣ガンが多発しその原因を調査したところ、患者らの母親が妊娠中にジエチルスチルベストールを服用していることがわかりました。

ダイオキシン

1gで1万数千人もの人が死んでしまうという猛毒化学物質。その毒性の強さは青酸カリの1000倍以上、サリンの2倍です。最近になってダイオキシンも環境ホルモンであることがわかってきました。甲状腺ホルモンの濃度を操作し、過剰に分泌させて口蓋裂という奇形を発生さます。加えて高濃度のダイオキシンを与えると精巣が萎縮することから性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの濃度も変化させます。

日本では1983年に行った調査で中国、四国、九州地方の12カ所のごみ焼却場から、ダイオキシンが検出されています。ダイオキシンは遺伝子のみではなく、中枢神経にも影響を与える上に発ガン性が確認されています。

ベトナム戦争では、ダイオキシンが不純物として含まれていた枯れ葉剤が使われ、散布された地域で多くの流産や奇形児の出産が増加したといいます。ベトナム戦争に従事していた兵下達の血液中に含まれるダイオキシン濃度を検査したところ非常に高濃度のダイオキシンが検出されました。当然ですが、この兵士たちの妻は不妊、早産、流産、奇形などの発生率が高く、特に奇形については、ベトナム戦争と無縁の人と比較すると15倍にもなりました。

ダイオキシンの問題を遙か昔のベトナム戦争で使われた薬剤だと思っている人も多いのですが、現代社会の周りにもたくさん存在しているのです。紙の原料であるパルプの漂白にはかつて塩素が使用されていました。漂白に一緒に使われる消泡剤やパルプの成分などが塩素と反応するとダイオキシンが発生します。
製紙工場では、防腐剤としてペンタクロフェノールという化学物質を使っていますが、この中にダイオキシンが混ざっています。また分析技術の発展によりダイオキシンが製品である紙にもふくまれていることがわかりました。
日常的に使用するトイレットペーパーやティッシュペーパーのような製品からもダイオキシンが検出されたのです。現在では、紙の漂白には、塩素の代わりにオゾンや過酸化水素水などが使用されるようになり、紙にダイオキシンが混ざることとはなくなりました。

また、多くの食品には微量ではありますが、ダイオキシンが混入しているのです。母乳には牛乳に含まれるダイオキシンより多くのダイオキシンが含まれています。家畜がダイオキシンを含んだ食品を食べることで、それらの肉や乳製品にもダイオキシンが含まれてしまうのです。日常的に食べる魚にもダイオキシンは含まれます。また、木などを燃やす際にもダイオキシンは発生します。一般的には1トンのゴミを燃やすと0.1mgのダイオキシンが出るといいます。

世界保健機関では、ダイオキシンの1日あたりの耐容摂取量を体重1kgあたり10ピコグラムと定めています。体重が50kgの人であれば、500ピコグラムとなります。この値はどんどん下がっていくに違いありません。

精巣ガン、子宮内膜症が増加している

人間の場合、妊娠6週目になると胎児の腎臓の近くに精巣が生成されます。これが男性ホルモンであるテストステロンを作り始めます。この働きによって男性の生殖器が発達し、正常ならば妊娠10週目くらいから胎児の精巣は、腎臓のあたりから下降をはじめ、出産直前に陰嚢までおりてきます。ところがこれが正常にいかない場合、停留睾丸になります。こうした障害をもつ男子がこの20年間で倍近くに増えています。

女性への影響をみてみると、環境ホルモンが主に女性ホルモン様の働きをして、そこでやはり生殖障害が出たり、子宮内膜症になったりするといいます。子宮内膜症は特に深刻で、アメリカ女性の10人にひとりがこの病気になる、とまで言われています。

子宮の内にある細胞組織(子宮内膜)が子宮以外のところに出てしまい増殖するものです。子宮の外というのは、たとえば卵巣、膀胱、腸などにあらわれ、月経の時に剥離していくので女性にとっては大変な痛みを伴います。しかも不妊症や骨盤内癒着などの合併症を引き起こします。
これまでの研究で、生まれて間もないマウスに女性ホルモンを投与すると、脳下垂体に異常をきたしホルモンコントリールに支障をきたすことがわかっています。プロラクチンというホルモンが常に分泌されてしまい、それが子宮内膜症の原因になることがわかっています。ほかにも精巣ガン、前立腺ガン、乳がん、子宮ガン、膣ガン、卵巣ガンなどのガンが増えているのも環境ホルモンと何らかの関係があるではないかと言われています。とくに乳がんはどれだけ女性ホルモンの暴露を受けたかによって発症率が変動すると言われています。

初潮が異常に早かったり、子供を産んだ経験のない人は、それだけ女性ホルモンの暴露期間が長くなるので、発生しやすいといいます。つまり、女性ホルモン様の働きをする環境ホルモンに長い間、暴露した人もそれだけ乳がんが発生しやすくなる可能性があります。

男性の精子が減少している

環境ホルモンについてでは生殖活動に異常をきたしている自然界の野生動物について解説しましたがどうも、この現象は動物だけに限らないようです。人間にも及んでいる事実があるようです。こうした取り組みの発端は人間の男性の精子の数が減っている現象からはじまりました。様々なデータからこの50年の間に明らかに男性の精子の数がへっていることがわかってきました。

考えてみれば、人工的な化学物質がこの地上に誕生?登場?してから100年以上。そしてこのわずか50年の間に人間はたくさんの化学物質をつくり、その数は1000万種を越えるというのです。
化学物質のおかげで、生活は便利になりましたが、その一方で大気、水、土壌という自然環境にこられの化学物質が入り込み、食料や水にまで汚染されるようになってしまったのです。

具体的な数値であわらすと、1940年から1990年の間の50年間で男性の精子の数は45%も減少しているのです。そして精液の両は25%も少なくなっているのです。50年前の1940年頃には、1mlあたり約1億1300万個の精子がいたのに、最近では1mlの中に約2000万個の精子しかいないという男性も増加傾向にあります。精子の数が少ない男性は1940年と比べて3倍にもなっているのです。

ただしこうした現象が全て環境ホルモンによるものなのか、ということはまだはっきりしていません。ただし、野生動物の間では、マウス等の実験から明らかにされていますので、その延長線上という観点から見れば間違いはなさそうです。

女性が子供を産まなくなったのは、晩婚化と、社会進出にあると言われていますが、果たしてそれだけの理由ではないように思います。文化的、社会的な理由以外に科学的な観点から見れば、ほかの理由を模索したときに「環境ホルモン」にたどり着いてしまうのです。

環境ホルモンについて

ここ最近、「環境ホルモン」に関するニュースがネット、新聞、ニュースでとりあげられています。これまでに馴染みのない言葉ですが、環境ホルモンは、専門家達の間ではかなり前から注目されていました。

ここで「環境ホルモン」とは?という意味を簡単に簡潔に説明することは困難ですが、人間が生きていく上で非常に重要な部分です。環境ホルモンそのものは、未だ研究段階なので専門家達の間でもまだまだ解明できていない部分がたくさんあります。

環境ホルモンを簡潔に言うば「生物の整腸に悪影響を及ぼす化学物質」といえます。いまの段階で解明されている範囲内でいうと、環境ホルモンの影響とは、農薬、界面活性剤、プラスチックの原材料などから女性ホルモン(エストロゲン)様の働きをする化学物質が出て、それが生物(人間や動物)に入り、あかたもホルモンのような働きをして、生物の体内にあらかじめ設計されている成長プログラムを妨げてしまうことです。

非常に微量でも生体に影響を及ぼし、主に胎児期や幼児期の特定の時期に暴露(環境ホルモンにさらされること)すると、とりわけ生殖器に異常を引き起こします。このようにホルモンに作用する物質という意味で、専門家の間では「外因性内分泌攪乱物質」とも呼ばれています。

もともと環境ホルモン問題のきっかけとなったのは、各国のレポートからです。

  • 巣をつくらないワシ
  • 孵化しないワニ、鴨ねの卵
  • 子供を産まないミンク
  • メスに性転換してしまう魚

など野生動物の間で観察された様々な異常と経過によるものです。

化学物質が人間の未来にも影響を及ぼすではないかという危惧から環境ホルモンの問題について本気で取り組むようになったのです。