ハンダは有害物質

高分子化合物と合金

重要な手紙を配達途中で覗かれないように、かつて欧米では、ろうで封印して、印章を押す習慣がありました。これを封蝋(ふうろう) といいます。ろうで封印をするのがその当時のセキュリティとしては、有効だったのでしょう。

シュラック(ラックカイガラムシの分泌物)などの樹脂を精油で溶かして顔料などを混ぜたものが使用されていますが、昔はミツバチの巣からとった蜜ろう(高級脂肪酸とアルコールの固形エステル) が用いられました。
ろうを漢字で蝋と表記するのは、元々昆虫に由来する物質だったからです。なお、化粧品のクリーム剤としても使われるパラフィンというろうは、皮膚を刺激して発疹などのアレルギーを起こし、またパラフィンガンと呼ばれるガンの引き金となったりすることもある危険な物質です。
こうした有機化合物とは別に、金属材料を接合する合金もロウと呼び、鍼と書きます(ここでは区別するため、蝋= ろう、鎖= ロウと表記することにします)。金属を接合するロウの代表例はハンダです( ハンダを半田と表わすのは当て字ではありません。語源は地名とも人名ともいわれます)。
一般的なハンダは鉛とスズの合金で、融点が低いので電気ゴテや焼きゴテで簡単に溶かすことができます。ハンダが鉄や銅などの金属を接合するのは、スズ原子が鉄や鋼の金属結晶のすきまに入りやすいからです。したがって、スズの含有量が多いほど接合性がよくなりますが、最も低い融点(183度)を示すのは鉛38%、スズ62%のハンダです。

貴金属による皮膚炎は微量有害金属によるアレルギーか?

スズ・鉛にその他の金属を加えたハンダは、特殊な用途に使われます。たとえばカドミウムを加えたものは耐熱性にすぐれ、インジウムを加えたものは耐アルカリ性にすぐれます。金を接合するための金ロウは、金・銀・銅・亜鉛を主体とした合金、ブロンズ(青銅) などを接合するための銀ロウは、銀・鋼・亜鉛などを主体をした合金ですが、いずれも少量のカドミウムを含みます。イヤリングや指輪など、皮膚に接触する貴金属で金属アレルギーが生じるときは、微量の有害金属が原因とも考えられます。ネックレスをつけるとじんましんのようなものが首周辺にできるのは、アレルギーです。

メッキは安全か?

危険な薬品が使用される化学メッキ

メッキはもともと減金がなまった日本語です。飛鳥寺、東大寺といった歴史ある大仏には、建立当初は金メッキが施されていました。当時のメッキ方法は、金を水銀に溶かしたアマルガム(合金の一種)として、それを製造されたドウに塗布してから熱で水銀を蒸発させ、金だけを残す焼き付けメッキという方法でした。これを鍍金といいます。メッキとも呼ばれるのは、アマルガムとなったとき金特有の色がなくなり、減金すなわち金がどこかへ消え失せたかのように思えるからです。

メッキの種類

  • 伝統的な鍍金…水銀とのアマルガムによる焼き付けメッキ。
  • 熔融メッキ…アルミニウム、スズ、亜鉛など融点の低い金属を鉄などにメッキするには、熔融メッキが行われます。鉄に亜鉛メッキしたものが、トタン、スズメッキしたものがブリキです。
  • 電気メッキ…メッキする金属を含む水溶液にメッキされる金属を電極として直流電流を流すと、陰極となるメッキされれる側の金属表面に、金属塩の薄い層が形成されます。この電気化学反応を利用したのが電気メッキです。
  • 化学メッキ…水溶液中の化学反応によってメッキする方法。電気メッキよりも時間がかかりますが、プラスチックやガラスなど、金属以外の材料にもメッキできるのが特徴です。ただし、化学メッキにも青酸カリや青酸ソーダ、ホルムアルデヒドなどの危険な工業薬品を使用します。

金属加工による金属ヒューム熱

金属加工の際の煙が害に!

真鍮細工を行う職人には、亜鉛熱と呼ばれる難病が知られていました。近年では、これは金属ヒューム(煙霧)の吸入によって起こる金属ヒューム熱(金属熱、鋳工熱)とも呼ばれる急性の中毒症状)の一種であることが判明しています。

症状としては、金属ヒュームを吸入して数時間後に、せきや胸の圧迫感、違和感などの呼吸器系の異常、発熱、口渇感、筋肉痛、頭痛、倦怠感、知覚異常などがあらわれ、それが2~3日ほど続きます。
メカニズムは、不明ですが、たんぱく質中のSH基は金属と結合しやすい性質をもっており、肺組織に金属たんぱくができると、それを異物としてアレルギー反応が起きるようです。

従来は、安全で無害と思われていた鉄やステンレスの切断でも、金属ヒューム熱を発症することがあります。工具などが便利になり、近所のホームセンターでも購入できるようになり、鉄やステンレスの切断でも金属ヒューム熱を発症することがあるのです。

金属製品の切断、溶接の際に生じる煙は、危険物質なので吸入しないようにしなければなりません。また、メッキ、溶接、金属切断、化学処理など、恒常的に金属ヒュームにさらされる労働環境では、しだいに体内に金属が蓄積し、金属ヒューム熱とは別の慢性中毒を引き起こします。
作業環境においては、換気、マスクなどの着用、定期的な汚染濃度の検査などの対策が必須です。一過性のアレルギーにとどまらないところが金属中毒の危険なところです。

金属ヒュームの種類

  • 亜鉛ヒューム…事故数、死亡者数ともに多いのが亜鉛ヒュームによる中毒です。現在は真鍮加工よりも亜鉛メッキ綱板・綱管の切断や溶接の際に発症しています。
  • カドミュウムヒューム…各種の合金の中には、カドミウムが添加されているものがあります。こうした合金を切断、溶接したときカドミュウムヒュームが発生。微量でも中毒症状を引き起こすので注意が必要です。
  • 水銀ヒューム…水銀は公害でも問題になった物質で、気化しやすく、加熱により空気中に充満すると肺から入り人体を汚染します。消化管からの吸収はほとんどありませんが、水銀蒸気の肺からの吸収率は8割以上になります。水銀や水銀を含む製品の取り扱いは注意が必要です。
  • 銅ヒューム展銅板や銅管などの切断は行われていますが、高速回転でのカッターやドリルなどを使うと高熱により銅ヒュームが発生します。銅ヒュームは亜鉛ヒュームと似たような中毒症状を引き起こします。

天然だからこそ発症するラテックス・アレルギー

アメリカでは、数十人が死亡している

ゴムノキの樹皮を傷つけることで採れる白い樹液は、天然ゴムの主成分(ポリィソプレン)の微粒子が、水中でコロイドとなって安定分散した物質。これをラテックといいます。

日常的にゴム製品に触れていると、手がかゆくなったり、発疹ができたりといったアレルギー症状があらわれることがあります。これまでゴムアレルギーは、接触性皮膚炎とみなされ、主として合成ゴム製品の製造過程で人為的に添加される加硫剤や、硬化剤などが原因物質として考えられてきました。

ところが、近年、ゴム手袋やゴム製シートなど、天然ゴム製品におって過敏かつ激しいアレルギー症状を示し、ひどい場合は、アナフィラキシーショックを起こし、死亡するというケースがあることも確認されました。

これは、接触性皮膚炎とはタイプの異なる即時反応型のⅠ型アレルギーで、広い意味のゴムアレルギーから区別して、特にラテックスアレルギーと呼ばれます。アメリカでは初の症例が1979年に報告されて以来数十人が無くなっています。

原因物質はブラックボックスのまま

即時反応型のⅠ型アレルギーの出現は、継続的にゴム製品に接触して、体内に監査状態が作りあげられていることを意味します。そのためラテックスアレルギーの患者の多くは、日常的に天然ゴム製品に接触せざを得ない、医療従事者にアレルギー性じんましんが起きるものです。

さらに、鼻炎、ぜんそく、アレルギー性鼻炎などの症状があらわれるのは、ゴム手袋から舞い上がるパウダーがラテックス粒子のキャリアーになっているからだとみられています。

一方、ラテックスアレルギーの被害を受ける特定の病気を持つ人たちとは、排尿困難のために尿路にカテーテルを留置しているなど、皮膚や粘膜を通してラテックスに対する感作状態ができてしまった患者のことです。

アレルゲンとなっているのは、天然ゴムに不純物として含まれる多種多様なたんぱく質であると考えられていますが、今のところ特定されていません。
天然ゴムだから安全だという固定概念は捨てなくてはならないということでもあります。また、天然の不純物もまだまだブラックボックスのままです。

花粉症の原因になる金属アレルギー

皮膚炎には刺激性のものとアレルギー性のものとがある

皮膚炎とは字のとおり、皮膚の炎症のこと。症状としては、赤く腫れる、熱い、痛い、かゆいという4つの兆候があります。

刺激性皮膚炎

酸、アルカリなど、刺激性のある物質が皮膚を直接刺激するこで起きる炎症です。刺激性の弱い物質でも、繰り返し刺激されれば炎症を起こします。

アレルギー性接触性皮膚炎

遅延型アレルギーの一種で、アレルゲンとなる原因物質が皮膚から浸入すると人体に抗体がつくられ、そののち再び物質が接触すると、そこに発疹などの皮膚炎を引き起こします。

核細菌に対する免疫ができるかを検査するツベリクリン反応は、接触性皮膚炎のアレルギー反応を利用したもので皮膚に注射されるのは、結核細菌の培養液の上澄みです。免疫ができていれば、この抗原に対して抗体が反応して、皮膚に発赤が現れます。

陰性の場合は、結核菌に感染しやすい状態にあるので、BCGを注射して人為的に免疫をもたせます。

医薬品や化粧品による皮膚炎について

指輪やイヤリング、ピアスなどによる皮膚炎にも刺激性のものとアレルギー性のものがあります。はじめて接着したり、サイズがあわないときに生じるのは、刺激性皮膚炎です。
しかし、痛みよりも痒みを伴うような発疹などが出た場合には、アレルギー性接触性皮膚炎の可能性があります。
入れ歯や虫歯治療でかぶせられる金属によるアレルギーも知られています。

さらに金属アレルギーが金属中毒と異なるのは、きっかけになる金属の量がごく微量であることです。同じ製品を使用しても全くアレルギーが起きない人もいるのです。

大気中に含まれる微量の金属が花粉症やその他のアレルギー性疾患の引き金の役割をしているという専門家もいます。しかし、原因となる微量金属の特定が困難で発症の仕組みは詳しくわかっていません。

燃やすと危険なプラスチック(合成樹脂)

“初”合成樹脂はベークライト(フェノール樹脂)

パイプや装飾品に使われるコハク(琥珀)は鉱物ではなく、太古の樹木の樹脂が地中で化石となってものです。樹脂は、植物から分泌される有機化合物で、一般に精油(植物性揮発油)に溶けていて流動性を示しますが、空気中で精油成分が揮発すると粘度を増して硬くなります。
たとえば、末の樹脂である松ヤニの精油成分はテレビン油で、それを蒸発させたり残りがロジンです。ちなみに野菜のピッチャーが滑り止めに使うロジンバックとはこのロジンの粉を入れた袋のことです。

初の合成樹脂は1907年に発明されたベークライト(フェノール樹脂)です。電気絶縁性などの性質が天然樹脂に似ていたため合成樹脂と呼ばれましたが、今日ではプラスチックとよばれることが多くなっています。これは加熱や加圧によって容易に変形する性質に由来しています。

フェノールはホルムアルデヒドと尿素を重合したプラスチックです。ホルムアルデヒドには、発ガン性があり微量でも化学物質過敏症を起こします。一部に食品の容器として使われていますが、食品の熱によってホルムアルデヒドの溶出が考えられるので、好ましいことではありません。

燃焼時に発生するガスは有害なものが多い

合成樹脂は原料となる単位化合物(モノマー)が数千~数万もつながった重合体(ポリマー)です。モノマーとなる化合物がエチレンの場合はポリエチレン、スチレンの場合はポリスチレンと呼ばれます。

合成樹脂は、熱可塑性と熱硬化性樹脂に大別されます。熱可塑性樹脂は、いったん硬くなっても加熱すると再び柔らかくなる物質をもちますが、熱硬化性樹脂は、いったん硬くなると加熱しても元の柔らかい状態には戻りません。

熱可塑性樹脂にはプラスチックと相性がよい比較的低分子の脂肪酸エステル、リン酸エステルなどが可塑剤(成形しやすくしたり、柔軟性を与えるために添加される物質)として加えられます。生産性の多い塩化ビニル樹脂においても、もっともよく使われるODP(フタル酸ジオクチル)で柔軟性が求められる塩化ビニルの壁紙などの可塑剤として添加されます。ところが、このDOPは、動物実験において催奇形性、発ガン性があることが確認されています。

熱可塑性樹脂の種類と主な用途

ポリエチレン 袋、包装材、バケツ、洗面器、灯油容器 あまり心配ない
ポリ塩化ビニル ラップフィルム、シート、パイプ、容器、タイルなど 塩素を含み燃焼すると猛毒のダイオキシンを発生する危険性あり
ポリプロピレン 食器、自動車部品など 添加物のBHT(酸化防止剤)には発ガン性あり
ポリスチレン 発泡スチロール、断熱材など 弱いながらスチレンモノマーに毒性あり
ABS樹脂 ヘルメット、自動車部品など 不明
アクリル樹脂 CD、電気製品、自動車部品、塗料など 燃焼ガスはきわめて有毒
ポリカーボネート ドライヤーなどの電気製品、耐熱食器 燃焼ガスや有毒
ポリアミド 機械部品、電気製品など ほとんど心配ないが、接触性皮膚炎を起こすことがある

熱硬化性樹脂の種類と主な用途

フェノール樹脂 ナベ、ヤカンの把手、プリント配線基板など 熱でホルムアルデヒドが溶出することがある
アクリル樹脂
(熱硬化型)
建材、ガラスの代用、接着剤など あまり心配ないが、燃焼ガスに刺激性あり
ポリエステル 浴槽、ボート、塗料など あまり心配ないが、燃焼ガスに刺激性あり
ポリウレタン樹脂 靴底、スポンジ、クッションなど 燃焼すると猛毒の青酸(シアン)ガスが発生
メラミン樹脂 化粧版、接着剤、塗料など 溶出するホルムアルデヒドに発ガン性あり
エポキシ樹脂 電気製品、接着剤など ほとんど心配ないが、接触性皮膚炎を起こすことがある

アレルギーの原因になる接着剤の有機溶剤

遊離するモノマーや有機溶剤がアレルギーの原因に

接着剤の使用用途はかなり広く用いられていますが、たくさんある接着剤の中でも、主成分が合成高分子物質であるものは、ニカワなどの天然接着剤に対して、合成接着剤あるいは単に接着剤と呼ばれます。文具店、DLY店では、さまざまな合成接着剤が市販されていますが、接着剤に接着しようとすると素材との相性があるため、素材に適した接着剤を選ぶことが大切です。

ポリエチレンやポリプロピレン、ナイロンなどは、接着剤との間の結合力が小さいために接着が困難になります。ただし、ほとんどの接着剤は、接触性皮膚炎を起こしたり、遊離するモノマーや有機溶剤の吸入によってアレルギー症状が出ることが確認されており、安易な使用は控えなくてはなりません。
長時間にわたる作業の場合には、換気に気を配り、風通しのよい場所を選ぶことも大切です。

工作などに広く使われるポリ酢酸ビニルのエマルション接着剤(木工ボンドは品名)は、水を媒体として水の蒸発後に固化、接着します。

ゴム系接着剤は合成ゴムをヘキサン、シクロヘキサンなどの有機溶剤に溶かしたモノですが、これらの有機溶媒や合成ゴムに含まれる不純物はアレルギーの原因となります。

エポキシ接着剤は、反応硬化型と呼ばれるモノで、二液を混ぜ合わせることで重合反応が進行して固化、接着しますが、エチレンジアミンなどの硬化剤はやはり同様にアレルギーの原因となります。

接着剤消費量の過半はホルムアルデヒドを含む合板用の接着剤

また、いわゆる瞬間接着剤(シアノアクリート系)は、微量の水の存在で短時間で重合反応が進むのが特徴で、外科手術のとき傷口をふさぐためにも利用されます。家庭には、小容量のものしか使われませんが、誤飲などをした場合には、皮膚や粘膜の炎症を引き起こし、また吸入によっては、呼吸困難を起こしてしまう場合もある危険物質です。

合成樹脂(プラスチック)には、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とがあります。が、固化しても加熱すると、再び柔らかくなる熱可塑性樹脂を利用したのがホットメルト接着剤(エチレン、酢酸ビニル重合体、ポリアミドなど)。
一方、硬化すると元に戻らない熱硬化性樹脂(フェノール樹脂、メラミン樹脂など)は合板用接着剤として利用されます。

日本の接着剤の消費量の半分以上が合板用接着剤です。そして合板用接着剤であるフェノール樹脂、メラミン樹脂はホルムアルデヒドを原料としています。新築住宅のシックハウス症候群の主たる原因物質とみられているのは、合板用接着剤から気化するホルムアルデヒドです。

合成接着剤の種類・用途

種類 用途 毒性
水性(酢酸ビニルエマルション系) 木材、紙、布など 誤飲すると嘔吐、腹痛、下痢などアレルギーの原因に。
エポキシ系エポキシ樹脂系 金属、硝子、陶磁器など 接触性皮膚炎やアレルギー性疾患の原因となることも。
ゴム系(合成ゴム系、ニトリルゴム系 塩化ビニル樹脂製品、木材、金属など アレルギーの原因に。モノマーは肝臓障害を起こし発ガン性も。
その他 ホットメルト系(エチレン・酢酸ビニル重合体系、ポリアミド系)、瞬間接着剤(シアノクリレート系)など。いずれもアレルギーの原因に。

シロアリ駆除剤、床下の防腐剤

木造建築が健康にいいという先入観

一般的な住居は、コンクリートの基礎をつくり、その上に土台となる木材を固定し、柱を立ち上げて壁などを張っていく工法が用いられます。
日本の風土には、木造の住宅が多く当たり前につくられています。

この土台や柱となる木材には、建物の荷重がかかるために、湿気で腐ったり、シロアリに食い荒らされたりすると、住宅の寿命は著しく短くなります。

そこで土台や柱に防腐剤やシロアリ駆除剤をしみこませた木材が、当たり前に使用されています。しかし、こうした薬剤で処理された木材を多用した住宅に、アレルギー性疾患や慢性中毒症状が多く現れることが確認されています。
かつて、シロアリ駆除剤として多用された有機塩素系のディルドリン(強い急性・慢性毒性がああり1981年に使用禁止)、クロルデリン(1986年に使用禁止)にかわって登場した有機リン系のシロアリ駆除剤も、農薬による慢性中毒に似た健康障害を起こすことで大きな問題となっています。瞳孔が小さくなる縮瞳が有機リン剤の急性中毒の症状ですが、慢性中毒ではじわじわと進行する視力低下のほか、内分泌系の異常により免疫力も低下して、多種多様なアレルギー症状がみられるようになります。

木造住宅が必ずしも健康住宅ではないのです。土台や柱には防虫効果があって、耐久性に優れた檜やヒバを使い、できるだけ合板も使わないことが望ましいのです。

シロアリ駆除剤とその毒性

系統 薬品名 毒性
有機塩素系 クロピリホス、DEP(トリクロルホン)、ECP(ジクロフェンチオンン)など 変異原性、催奇形性。ECPには、ダイオキシンを含有する疑いも。
有機リン系 MEP(フェニトロチオン) 変異原性
CVMP(テトラクロルビンホス) 発ガン性
ホキシム 有機リン系の中では比較的低毒性と言われている。
ピレスロイド系 アレスリン、ペルメトリン、トラロメトリンなど 粘膜刺激作用、呼吸困難、一部には発ガン性
カーバメート系 PHC(プロポクスル)など 呼吸困難、変異原性、発ガン性の疑いも。

木材防腐剤とその毒性

クレオソート 古くから使用されてきたタール系防腐剤 ベンゾピレンなどの発ガン物質を含む
ジニトロフェノール 写真の現像液にも使用 白内障、失明、肝障害など
TBZ
(チアンベンダゾール)
農業用殺菌剤として広く利用 肝臓障害、変異原性、催奇形性
ナフテン酸銅 殺菌剤として使われたきた有機銅剤 銅による金属中毒症状魚類に対しては強毒性。
塩化ベンザルコニウム 逆性セッケンとも呼ばれる陽イオン界面活性剤 誤飲は非常に危険。微量でも目に入るとアレルギー性結膜炎を発症する。

肺ガンの原因にもなるアスベスト

熱に弱点の鉄筋・鉄骨

建築基準法では、大規模な建築物は、主要構造部をすべて耐火構造にすることが義務づけられています。二階建て以下の住宅などの建築物についても外壁を耐火構造にしたり、主要構造物を不燃材料や準不燃材料でつくることが要求されています。

コンクリートが耐火性に優れていることは言うまでもありませんが、ここで問題となるのは、鉄筋・鉄骨コンクリート造の建築地物において、コンクリートは鉄筋や鉄骨の助けを借りて自らの荷重を支えているわけですが、鉄骨や鉄筋は常温では頑丈なものの、火災により加熱されると、アメのように柔らかくなり建築物の荷重を支えきれなくなる点です。そこで鉄筋や鉄骨には、十分なコンクリートの被覆(かぶり厚さ)がまた、むきだしの鉄骨には、ロックウール(岩綿)やアスベスト(石綿)による耐火被覆が必要になるのです。

アメリカの8倍もの使用量

ロックウールはちょうど綿菓子をつくるように、ケイ酸塩を含む岩石を熔融して、これに空気を強く吹き付けて急冷し綿状にしたものです。

一方、アスベストは繊維のケイ酸塩鉱物をもみほぐして得られます。日本で使用されるアスベストはほぼ10%近くがカナダやブラジルなどからの輸入品です。

アスベストはぐれた耐火覆材ですが、発ガン性があることが明らかにされています。耐火被覆材としてのアスベストの吹きつけは、1975年に原則的に禁止されました。しかし、その後も他の吹きつけと混合して使われている状態です。これは今なお、年間約80万tのアスベストが輸入されていることかわらもわかります。日本の使用量はアメリカの8倍です。さらに、人口1人あたりでは16倍もの数字になります。

アスベストによる健康被害は、主に空中に飛散するアスベスト繊維の吸収によるものです。大量のアスベスト繊維を一気に吸収した場合、あるいは少量でも長期間にわたって吸収し続けた場合、肺が繊維化するアスベスト肺(石綿肺)を起こします。治療法は現在のところ確立はされていません。

重いアスベスト肺になると呼吸困難を起こして死亡することがあるほか、やがて肺ガンや悪性中皮症へと以降する危険性も高まります。1995年には、特に毒性の強いアスベストの使用、製造が禁止されました。が、しかしアスベストを使った古い古い建造物を解体するとき、繊細なアスベスト繊維が粉塵に混じって飛散するのは避けられず、新たな環境問題として作業方法の基準づくりなどが求められています。

アスベストに関連するお仕事をしたことおがある、または現在している方は自分でできる!肺ガン検査キットで肺ガンの検査を行いましょう。肺がんの中でも、レントゲンには写らない早期の肺門部(気管支周辺の肺)のがんを発見するため、痰(たん)中に異形細胞(がんの疑いがある細胞)があるかどうかを顕微鏡でくまなく探すための検査キットです。郵送で行うことができます。病院には行かなくてできます。

シックハウス症候群

新築住宅に住み始めると急に心身が不調に

症候群(シンドローム)とは、心身にいくつかの異常な症状が認められても、その原因が明らかでなかったり、複数の原因が考えられるとき、病名に準ずるものとして、とりあえず命名されたものです。

新築あるいは、改築間もない家に住み始めてから、目がちかちかしたり、のどが痛んだり、鼻が乾く、あるいは、鼻水がでるといった症状にはじまり、頭痛やめまい、耳鳴り、イライラ、睡眠障害など、さまざまな心身の不調が現れることがあります。これが新築病とも呼ばれるシックハウス症候群で、同様の症状がオフィス、マンションでも起きるときは、シックビル症候群などと呼ばれます。

シックハウス症候群の主たる原因といわれるのが、壁材、床材などの建材、塗料や接着剤に含まれている化学物質です。なんでも近年、大きな社会問題になっているのが、一部に発ガン性が報告されているものもあるVOC(揮発性有機化合物)です。労働安全衛生法法で規制対象になっているは47品目です。次にVOCを紹介します。

シックハウス症候群の原因となっているVOC(揮発性有機化合物)

ホルムアルデヒド(ホルマリン)

合板はじめ、壁紙、フローリング、家具の接着剤などに使用。新築住宅でツーンとした異臭を発するのは主にアルデヒド。皮膚、粘膜への刺激性が強く呼吸器障害のほか、中枢神経障害や発ガン性も報告されている。

トルエン・キシレン・ベンゼン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン

芳香族化合物特有の芳香を特徴とするベンゼンおよびベンゼン誘導体。塗装用溶剤、樹脂ワックスの溶剤などに多用されている。主な症状は、吐き気、頭痛、めまいなどベンゼンには発ガン性もあり。

酢酸ブチル、n-ブタノール

果実のような芳香のある液体。プラスチックの溶剤や香料の原料としても使われる。吐き気、頭痛、めまいなど。

テトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物

ドライクリーニングのほか、油脂の洗浄剤などとして広く使用される。

ナフタレン

防虫剤。白色結晶から気化して特有の強い臭気を放つ。水には不溶だが、有機溶媒にはよく溶ける性質を持つ。粘膜刺激作用、血液障害など。

フェンチオ(MPP)、クロルピリホスなど

有機リン系殺虫剤。吐き気、頭痛、めまい、中枢神経障害など。