アレルギーと免疫

専門家でさえも混乱する分野

免疫は一般的な常識としては、それほど難しいわけではありません。「生体が疾病、特に感染症に対して抵抗力を獲得する現象」というのが広辞苑に記されている内容です。
たとえば、ハシカにかかると、免疫ができてその後かからなくなる。というのは誰もが知っていることでしょう。

ところが、20世紀の免疫学の進歩によってこの古典的な免疫観に追加修正を加える必要が生まれました。そこで国語辞典では、前述の説明とともに次のような説明も併記されています。

「自己と非自己を識別し、非自己から自己を守る構造、すなわち抗原抗体反応で脊髄動物で特に発達。微生物など異種の高分子(抗原)の体内侵入に対してリンパ球・マクロファージなどが働いて特異な抗体を形成し、抗原の作用を排除・制御する。細胞性免疫と体液免疫とがある。

これをはじめて読んでみて、すぐに理解出来る人はほぼいません。抗原抗体・リンパ球・マクロファージとは?という説明もなく免疫のしくみが全くわかりません。これは国語辞書が不適切なわけではなく免疫システムが専門の研究者さえも混乱させるほど複雑なのです。

ワクチン療法は免疫で病気を防ぐ

「イミュニティ(immunity)」という免疫は、もともと疫病(伝染病)から免れるという意味の言葉です。牛の病気である牛痘(ぎゅうとう=牛の天然痘)にかかった乳搾りの娘は、天然痘にはかからないという言い伝えにヒントを得て牛痘の病変から病毒をとって、それを接種するという実験を断行したのは、18世紀末の英国のジェンナです。
この予防法はのちに19世紀のパスツールによってワクチン療法と命名されました。

パスツールによって確立されたワクチン療法により、歴史的に多くの人々の命を奪った感染症は予防できるようになったのです。さらに、感染症の原因は、細菌(バクテリア)をはじめとする微生物であることもわかったので、外科手術のときは、手術器具や手術室、手や衣服を消毒することがきわめて重要であることがわかりました。

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