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花粉症の原因になる金属アレルギー

皮膚炎には刺激性のものとアレルギー性のものとがある

皮膚炎とは字のとおり、皮膚の炎症のこと。症状としては、赤く腫れる、熱い、痛い、かゆいという4つの兆候があります。

刺激性皮膚炎

酸、アルカリなど、刺激性のある物質が皮膚を直接刺激するこで起きる炎症です。刺激性の弱い物質でも、繰り返し刺激されれば炎症を起こします。

アレルギー性接触性皮膚炎

遅延型アレルギーの一種で、アレルゲンとなる原因物質が皮膚から浸入すると人体に抗体がつくられ、そののち再び物質が接触すると、そこに発疹などの皮膚炎を引き起こします。

核細菌に対する免疫ができるかを検査するツベリクリン反応は、接触性皮膚炎のアレルギー反応を利用したもので皮膚に注射されるのは、結核細菌の培養液の上澄みです。免疫ができていれば、この抗原に対して抗体が反応して、皮膚に発赤が現れます。

陰性の場合は、結核菌に感染しやすい状態にあるので、BCGを注射して人為的に免疫をもたせます。

医薬品や化粧品による皮膚炎について

指輪やイヤリング、ピアスなどによる皮膚炎にも刺激性のものとアレルギー性のものがあります。はじめて接着したり、サイズがあわないときに生じるのは、刺激性皮膚炎です。
しかし、痛みよりも痒みを伴うような発疹などが出た場合には、アレルギー性接触性皮膚炎の可能性があります。
入れ歯や虫歯治療でかぶせられる金属によるアレルギーも知られています。

さらに金属アレルギーが金属中毒と異なるのは、きっかけになる金属の量がごく微量であることです。同じ製品を使用しても全くアレルギーが起きない人もいるのです。

大気中に含まれる微量の金属が花粉症やその他のアレルギー性疾患の引き金の役割をしているという専門家もいます。しかし、原因となる微量金属の特定が困難で発症の仕組みは詳しくわかっていません。

燃やすと危険なプラスチック(合成樹脂)

“初”合成樹脂はベークライト(フェノール樹脂)

パイプや装飾品に使われるコハク(琥珀)は鉱物ではなく、太古の樹木の樹脂が地中で化石となってものです。樹脂は、植物から分泌される有機化合物で、一般に精油(植物性揮発油)に溶けていて流動性を示しますが、空気中で精油成分が揮発すると粘度を増して硬くなります。
たとえば、末の樹脂である松ヤニの精油成分はテレビン油で、それを蒸発させたり残りがロジンです。ちなみに野菜のピッチャーが滑り止めに使うロジンバックとはこのロジンの粉を入れた袋のことです。

初の合成樹脂は1907年に発明されたベークライト(フェノール樹脂)です。電気絶縁性などの性質が天然樹脂に似ていたため合成樹脂と呼ばれましたが、今日ではプラスチックとよばれることが多くなっています。これは加熱や加圧によって容易に変形する性質に由来しています。

フェノールはホルムアルデヒドと尿素を重合したプラスチックです。ホルムアルデヒドには、発ガン性があり微量でも化学物質過敏症を起こします。一部に食品の容器として使われていますが、食品の熱によってホルムアルデヒドの溶出が考えられるので、好ましいことではありません。

燃焼時に発生するガスは有害なものが多い

合成樹脂は原料となる単位化合物(モノマー)が数千~数万もつながった重合体(ポリマー)です。モノマーとなる化合物がエチレンの場合はポリエチレン、スチレンの場合はポリスチレンと呼ばれます。

合成樹脂は、熱可塑性と熱硬化性樹脂に大別されます。熱可塑性樹脂は、いったん硬くなっても加熱すると再び柔らかくなる物質をもちますが、熱硬化性樹脂は、いったん硬くなると加熱しても元の柔らかい状態には戻りません。

熱可塑性樹脂にはプラスチックと相性がよい比較的低分子の脂肪酸エステル、リン酸エステルなどが可塑剤(成形しやすくしたり、柔軟性を与えるために添加される物質)として加えられます。生産性の多い塩化ビニル樹脂においても、もっともよく使われるODP(フタル酸ジオクチル)で柔軟性が求められる塩化ビニルの壁紙などの可塑剤として添加されます。ところが、このDOPは、動物実験において催奇形性、発ガン性があることが確認されています。

熱可塑性樹脂の種類と主な用途

ポリエチレン 袋、包装材、バケツ、洗面器、灯油容器 あまり心配ない
ポリ塩化ビニル ラップフィルム、シート、パイプ、容器、タイルなど 塩素を含み燃焼すると猛毒のダイオキシンを発生する危険性あり
ポリプロピレン 食器、自動車部品など 添加物のBHT(酸化防止剤)には発ガン性あり
ポリスチレン 発泡スチロール、断熱材など 弱いながらスチレンモノマーに毒性あり
ABS樹脂 ヘルメット、自動車部品など 不明
アクリル樹脂 CD、電気製品、自動車部品、塗料など 燃焼ガスはきわめて有毒
ポリカーボネート ドライヤーなどの電気製品、耐熱食器 燃焼ガスや有毒
ポリアミド 機械部品、電気製品など ほとんど心配ないが、接触性皮膚炎を起こすことがある

熱硬化性樹脂の種類と主な用途

フェノール樹脂 ナベ、ヤカンの把手、プリント配線基板など 熱でホルムアルデヒドが溶出することがある
アクリル樹脂
(熱硬化型)
建材、ガラスの代用、接着剤など あまり心配ないが、燃焼ガスに刺激性あり
ポリエステル 浴槽、ボート、塗料など あまり心配ないが、燃焼ガスに刺激性あり
ポリウレタン樹脂 靴底、スポンジ、クッションなど 燃焼すると猛毒の青酸(シアン)ガスが発生
メラミン樹脂 化粧版、接着剤、塗料など 溶出するホルムアルデヒドに発ガン性あり
エポキシ樹脂 電気製品、接着剤など ほとんど心配ないが、接触性皮膚炎を起こすことがある
大量のペットボトルは廃プラスチックとして地球を汚染します

できるだけ水筒を購入しましょう。

アレルギーの原因になる接着剤の有機溶剤

遊離するモノマーや有機溶剤がアレルギーの原因に

接着剤の使用用途はかなり広く用いられていますが、たくさんある接着剤の中でも、主成分が合成高分子物質であるものは、ニカワなどの天然接着剤に対して、合成接着剤あるいは単に接着剤と呼ばれます。文具店、DLY店では、さまざまな合成接着剤が市販されていますが、接着剤に接着しようとすると素材との相性があるため、素材に適した接着剤を選ぶことが大切です。

ポリエチレンやポリプロピレン、ナイロンなどは、接着剤との間の結合力が小さいために接着が困難になります。ただし、ほとんどの接着剤は、接触性皮膚炎を起こしたり、遊離するモノマーや有機溶剤の吸入によってアレルギー症状が出ることが確認されており、安易な使用は控えなくてはなりません。
長時間にわたる作業の場合には、換気に気を配り、風通しのよい場所を選ぶことも大切です。

工作などに広く使われるポリ酢酸ビニルのエマルション接着剤(木工ボンドは品名)は、水を媒体として水の蒸発後に固化、接着します。

ゴム系接着剤は合成ゴムをヘキサン、シクロヘキサンなどの有機溶剤に溶かしたモノですが、これらの有機溶媒や合成ゴムに含まれる不純物はアレルギーの原因となります。

エポキシ接着剤は、反応硬化型と呼ばれるモノで、二液を混ぜ合わせることで重合反応が進行して固化、接着しますが、エチレンジアミンなどの硬化剤はやはり同様にアレルギーの原因となります。

接着剤消費量の過半はホルムアルデヒドを含む合板用の接着剤

また、いわゆる瞬間接着剤(シアノアクリート系)は、微量の水の存在で短時間で重合反応が進むのが特徴で、外科手術のとき傷口をふさぐためにも利用されます。家庭には、小容量のものしか使われませんが、誤飲などをした場合には、皮膚や粘膜の炎症を引き起こし、また吸入によっては、呼吸困難を起こしてしまう場合もある危険物質です。

合成樹脂(プラスチック)には、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とがあります。が、固化しても加熱すると、再び柔らかくなる熱可塑性樹脂を利用したのがホットメルト接着剤(エチレン、酢酸ビニル重合体、ポリアミドなど)。
一方、硬化すると元に戻らない熱硬化性樹脂(フェノール樹脂、メラミン樹脂など)は合板用接着剤として利用されます。

日本の接着剤の消費量の半分以上が合板用接着剤です。そして合板用接着剤であるフェノール樹脂、メラミン樹脂はホルムアルデヒドを原料としています。新築住宅のシックハウス症候群の主たる原因物質とみられているのは、合板用接着剤から気化するホルムアルデヒドです。

合成接着剤の種類・用途

種類 用途 毒性
水性(酢酸ビニルエマルション系) 木材、紙、布など 誤飲すると嘔吐、腹痛、下痢などアレルギーの原因に。
エポキシ系エポキシ樹脂系 金属、硝子、陶磁器など 接触性皮膚炎やアレルギー性疾患の原因となることも。
ゴム系(合成ゴム系、ニトリルゴム系 塩化ビニル樹脂製品、木材、金属など アレルギーの原因に。モノマーは肝臓障害を起こし発ガン性も。
その他 ホットメルト系(エチレン・酢酸ビニル重合体系、ポリアミド系)、瞬間接着剤(シアノクリレート系)など。いずれもアレルギーの原因に。

シロアリ駆除剤、床下の防腐剤

木造建築が健康にいいという先入観

一般的な住居は、コンクリートの基礎をつくり、その上に土台となる木材を固定し、柱を立ち上げて壁などを張っていく工法が用いられます。
日本の風土には、木造の住宅が多く当たり前につくられています。

この土台や柱となる木材には、建物の荷重がかかるために、湿気で腐ったり、シロアリに食い荒らされたりすると、住宅の寿命は著しく短くなります。

そこで土台や柱に防腐剤やシロアリ駆除剤をしみこませた木材が、当たり前に使用されています。しかし、こうした薬剤で処理された木材を多用した住宅に、アレルギー性疾患や慢性中毒症状が多く現れることが確認されています。
かつて、シロアリ駆除剤として多用された有機塩素系のディルドリン(強い急性・慢性毒性がああり1981年に使用禁止)、クロルデリン(1986年に使用禁止)にかわって登場した有機リン系のシロアリ駆除剤も、農薬による慢性中毒に似た健康障害を起こすことで大きな問題となっています。瞳孔が小さくなる縮瞳が有機リン剤の急性中毒の症状ですが、慢性中毒ではじわじわと進行する視力低下のほか、内分泌系の異常により免疫力も低下して、多種多様なアレルギー症状がみられるようになります。

木造住宅が必ずしも健康住宅ではないのです。土台や柱には防虫効果があって、耐久性に優れた檜やヒバを使い、できるだけ合板も使わないことが望ましいのです。

シロアリ駆除剤とその毒性

系統 薬品名 毒性
有機塩素系 クロピリホス、DEP(トリクロルホン)、ECP(ジクロフェンチオンン)など 変異原性、催奇形性。ECPには、ダイオキシンを含有する疑いも。
有機リン系 MEP(フェニトロチオン) 変異原性
CVMP(テトラクロルビンホス) 発ガン性
ホキシム 有機リン系の中では比較的低毒性と言われている。
ピレスロイド系 アレスリン、ペルメトリン、トラロメトリンなど 粘膜刺激作用、呼吸困難、一部には発ガン性
カーバメート系 PHC(プロポクスル)など 呼吸困難、変異原性、発ガン性の疑いも。

木材防腐剤とその毒性

クレオソート 古くから使用されてきたタール系防腐剤 ベンゾピレンなどの発ガン物質を含む
ジニトロフェノール 写真の現像液にも使用 白内障、失明、肝障害など
TBZ
(チアンベンダゾール)
農業用殺菌剤として広く利用 肝臓障害、変異原性、催奇形性
ナフテン酸銅 殺菌剤として使われたきた有機銅剤 銅による金属中毒症状魚類に対しては強毒性。
塩化ベンザルコニウム 逆性セッケンとも呼ばれる陽イオン界面活性剤 誤飲は非常に危険。微量でも目に入るとアレルギー性結膜炎を発症する。

肺ガンの原因にもなるアスベスト

熱に弱点の鉄筋・鉄骨

建築基準法では、大規模な建築物は、主要構造部をすべて耐火構造にすることが義務づけられています。二階建て以下の住宅などの建築物についても外壁を耐火構造にしたり、主要構造物を不燃材料や準不燃材料でつくることが要求されています。

「肺ガン」高齢者、早期がんに即効のレーザー新療法

コンクリートが耐火性に優れていることは言うまでもありませんが、ここで問題となるのは、鉄筋・鉄骨コンクリート造の建築地物において、コンクリートは鉄筋や鉄骨の助けを借りて自らの荷重を支えているわけですが、鉄骨や鉄筋は常温では頑丈なものの、火災により加熱されると、アメのように柔らかくなり建築物の荷重を支えきれなくなる点です。そこで鉄筋や鉄骨には、十分なコンクリートの被覆(かぶり厚さ)がまた、むきだしの鉄骨には、ロックウール(岩綿)やアスベスト(石綿)による耐火被覆が必要になるのです。

アメリカの8倍もの使用量

ロックウールはちょうど綿菓子をつくるように、ケイ酸塩を含む岩石を熔融して、これに空気を強く吹き付けて急冷し綿状にしたものです。

一方、アスベストは繊維のケイ酸塩鉱物をもみほぐして得られます。日本で使用されるアスベストはほぼ10%近くがカナダやブラジルなどからの輸入品です。

アスベストはぐれた耐火覆材ですが、発ガン性があることが明らかにされています。耐火被覆材としてのアスベストの吹きつけは、1975年に原則的に禁止されました。しかし、その後も他の吹きつけと混合して使われている状態です。これは今なお、年間約80万tのアスベストが輸入されていることかわらもわかります。日本の使用量はアメリカの8倍です。さらに、人口1人あたりでは16倍もの数字になります。

アスベストによる健康被害は、主に空中に飛散するアスベスト繊維の吸収によるものです。大量のアスベスト繊維を一気に吸収した場合、あるいは少量でも長期間にわたって吸収し続けた場合、肺が繊維化するアスベスト肺(石綿肺)を起こします。治療法は現在のところ確立はされていません。

重いアスベスト肺になると呼吸困難を起こして死亡することがあるほか、やがて肺ガンや悪性中皮症へと以降する危険性も高まります。1995年には、特に毒性の強いアスベストの使用、製造が禁止されました。が、しかしアスベストを使った古い古い建造物を解体するとき、繊細なアスベスト繊維が粉塵に混じって飛散するのは避けられず、新たな環境問題として作業方法の基準づくりなどが求められています。

アスベストに関連するお仕事をしたことおがある、または現在している方は自分でできる!肺ガン検査キットで肺ガンの検査を行いましょう。肺がんの中でも、レントゲンには写らない早期の肺門部(気管支周辺の肺)のがんを発見するため、痰(たん)中に異形細胞(がんの疑いがある細胞)があるかどうかを顕微鏡でくまなく探すための検査キットです。郵送で行うことができます。病院には行かなくてできます。

シックハウス症候群

新築住宅に住み始めると急に心身が不調に

症候群(シンドローム)とは、心身にいくつかの異常な症状が認められても、その原因が明らかでなかったり、複数の原因が考えられるとき、病名に準ずるものとして、とりあえず命名されたものです。

新築あるいは、改築間もない家に住み始めてから、目がちかちかしたり、のどが痛んだり、鼻が乾く、あるいは、鼻水がでるといった症状にはじまり、頭痛やめまい、耳鳴り、イライラ、睡眠障害など、さまざまな心身の不調が現れることがあります。これが新築病とも呼ばれるシックハウス症候群で、同様の症状がオフィス、マンションでも起きるときは、シックビル症候群などと呼ばれます。

シックハウス症候群の主たる原因といわれるのが、壁材、床材などの建材、塗料や接着剤に含まれている化学物質です。なんでも近年、大きな社会問題になっているのが、一部に発ガン性が報告されているものもあるVOC(揮発性有機化合物)です。労働安全衛生法法で規制対象になっているは47品目です。次にVOCを紹介します。

シックハウス症候群の原因となっているVOC(揮発性有機化合物)

ホルムアルデヒド(ホルマリン)

合板はじめ、壁紙、フローリング、家具の接着剤などに使用。新築住宅でツーンとした異臭を発するのは主にアルデヒド。皮膚、粘膜への刺激性が強く呼吸器障害のほか、中枢神経障害や発ガン性も報告されている。

トルエン・キシレン・ベンゼン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン

芳香族化合物特有の芳香を特徴とするベンゼンおよびベンゼン誘導体。塗装用溶剤、樹脂ワックスの溶剤などに多用されている。主な症状は、吐き気、頭痛、めまいなどベンゼンには発ガン性もあり。

酢酸ブチル、n-ブタノール

果実のような芳香のある液体。プラスチックの溶剤や香料の原料としても使われる。吐き気、頭痛、めまいなど。

テトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物

ドライクリーニングのほか、油脂の洗浄剤などとして広く使用される。

ナフタレン

防虫剤。白色結晶から気化して特有の強い臭気を放つ。水には不溶だが、有機溶媒にはよく溶ける性質を持つ。粘膜刺激作用、血液障害など。

フェンチオ(MPP)、クロルピリホスなど

有機リン系殺虫剤。吐き気、頭痛、めまい、中枢神経障害など。

免疫治療は医学界に大論争を引き起こした

毒素を中和する「抗毒素」

ワクチンの開発と並行して19世紀の末から20世紀にかけて誕生したのが化学療法です。ワクチンはそもそも「予防」が目的ですが、感染してしまった場合は、体内に侵入した病原菌を化学薬品によて死滅あるいは、無害化さればよいというのが化学療法の根底にある考え方です。

ところが、すでに19世紀の細菌学者は、免疫の根幹に関わる新たな事実を発見していました。破傷風菌やジフテリア菌の培養液には、菌を除去してもなお、きわめて強力な毒素が含まれていることがわかったのです。
その後、ベーリングや北里柴三朗らによって確立された血清療法は、細菌の毒素を注射した動物の血清に、毒素を中和する物質がつくられることを利用したものです。
この物質は、「抗毒素」と呼ばれます。

この抗毒素の本体はたんぱく質(抗体)であり、血清療法とは抗原抗体反応(免疫反応)であることが知られるようになるのはその後のことです。しかし、抗毒素の発見は当時のヨーロッパ医学においては、大論争を巻き起こすのです。
争点は、伝染病防御の主役は、細胞なのか?体液なのか?という議論です。

抗毒素の発見は、古代ギリシャのヒポクラテスの体液説の復活を思わせるモノが多々ありました。

病気はなぜ治るのか?を問い直す

ヒポクラテスは、人体には、血液、粘膜、黒胆汁、黄胆汁という四4種類の体液が流れていて、このバランスが崩れると病気になると考えたと伝えられています。もっとも、この非科学的な体液説は、ヒポクラテスのものではないともいわれています。むしろ重要なのは、ヒポクラテスが人間は、生まれながらの自然治癒力が備わっていて、医者や薬というには、病人のもつ自然治癒力の手助けをするものにすぎないという考え方を医療に根本に据えたいということです。

これは東洋医学にも通じる理解しやすい考え方ですが、ルネサンス以降のヨーロッパ医学は、解剖学からはじまったたために、いつのまにか臓器中心、、そして細胞中心の病気観・医学観に変わってしまったのです。
病巣は手術で切除し、病原菌は、薬で殺してしまうのが治療であると考えたためです。

血液中の抗毒素が発見されたということは、病気を防御する働きが、臓器や細胞ではなく体液にあることを意味します。ヒポクラテス医学を否定してきたヨーロッパの主流医学界としは、体液説の復活は認めるわけにはいかなかったのです。この論争は現在でも形をかえて続いています。

それは、結局のところ「なぜ?病気は治るのか」という問題になります。ガンは、薬や手術で治るという医療観もあれば、自然治癒力で治る、という医療観もあります。これは非常に重大な事項でもあるのです。

アレルギーと免疫

専門家でさえも混乱する分野

免疫は一般的な常識としては、それほど難しいわけではありません。「生体が疾病、特に感染症に対して抵抗力を獲得する現象」というのが広辞苑に記されている内容です。
たとえば、ハシカにかかると、免疫ができてその後かからなくなる。というのは誰もが知っていることでしょう。

ところが、20世紀の免疫学の進歩によってこの古典的な免疫観に追加修正を加える必要が生まれました。そこで国語辞典では、前述の説明とともに次のような説明も併記されています。

「自己と非自己を識別し、非自己から自己を守る構造、すなわち抗原抗体反応で脊髄動物で特に発達。微生物など異種の高分子(抗原)の体内侵入に対してリンパ球・マクロファージなどが働いて特異な抗体を形成し、抗原の作用を排除・制御する。細胞性免疫と体液免疫とがある。

これをはじめて読んでみて、すぐに理解出来る人はほぼいません。抗原抗体・リンパ球・マクロファージとは?という説明もなく免疫のしくみが全くわかりません。これは国語辞書が不適切なわけではなく免疫システムが専門の研究者さえも混乱させるほど複雑なのです。

ワクチン療法は免疫で病気を防ぐ

「イミュニティ(immunity)」という免疫は、もともと疫病(伝染病)から免れるという意味の言葉です。牛の病気である牛痘(ぎゅうとう=牛の天然痘)にかかった乳搾りの娘は、天然痘にはかからないという言い伝えにヒントを得て牛痘の病変から病毒をとって、それを接種するという実験を断行したのは、18世紀末の英国のジェンナです。
この予防法はのちに19世紀のパスツールによってワクチン療法と命名されました。

パスツールによって確立されたワクチン療法により、歴史的に多くの人々の命を奪った感染症は予防できるようになったのです。さらに、感染症の原因は、細菌(バクテリア)をはじめとする微生物であることもわかったので、外科手術のときは、手術器具や手術室、手や衣服を消毒することがきわめて重要であることがわかりました。

化学物質忌避コロニー

患者の解毒と体質改善が主な目的

複数の因子、複数のプロセスがからんだ生体反応は、その因果関係を明らかにすることが簡単ではありません。セロン・G.・ ランドルフが追究したのは、未知なる原因物質でしたが、それは未知なる発症の仕組みの追究でもありました。幸いなことにセロン・G.・ ランドルフが化学物質過敏症、という考え方に到達したときに、同時に免疫学のほうも飛躍的な進歩を遂げつつありました。アレルギーの謎は免疫学によって解かれ、そそてまた化学物質過敏症とアレルギーとの類似点や差異もしだいに解明されつつありました。

しかし、そこで解明されたのは、一般論としての化学物質過敏症であり、個々の患者における発症原因の追及とは別問題でした。そこでセロン・G.・ ランドルフは自分の説を立証するために、有害化学物質を排除した環境施設(環境制御施設)をつくったのです。その後、似たような環境施設が世界各地でつくられるようになり、これを「環境健康センター」「化学物質忌避コロニー」などと呼ばれています。

化学物質忌避コロニーは排気ガスなどの影響のない、空気が清浄で自然豊かな郊外に設けられます。化学物質過敏症の人が暮らすことになる施設内の住居には、食料の保管に必要な冷蔵庫、炊事に必要な電気コンロや食器などを除いて、不必要なものをすべて排除されます。食料も、無農薬、無添加の自然食品、水も水道水ではなくナチュラルミネラルウォーター が用いられます。

合成洗剤、化粧品なども遠ざけられ、衣類も主に天然素材のものが選ばれます。このような生活を送るうちに化学物質過敏症の原因物質が体内から排除されるのです。
こうした施設の目的は、原因物質の特定ではなく、解毒と体質改善です。アメリカの化学物質忌避コロニーにおいては、積極的な解毒方法として次のようなものが採用されています。

有害化学物質の積極的な解毒法

エアロビクス

有害化学物質、とくに有機塩素系化合物は脂肪に蓄積しやすいので、余分な油を落として解毒します。散歩、ジョギングなどの運動療法も効果があります。
脂肪分の多いものは極力避ける

低温サウナ

低温サウナ(約60~80度)に2時間以上入る解毒法で汗腺から毒物を排出するのが目的です。半身浴なども効果があります。
入浴で芯からじっくり温める方法

ダイエット・食事療法

食物は人体の最大の汚染物です。そこで安全で栄養バランスにすぐれた食事で免疫力を強化します。

ここで紹介している解毒は、美容で言われているデトックスとは少し意味合いの異なるものですが、結果、美容にも効果があることは間違いありません。

化学物質過敏症はどのように発見されたのか?

アメリカの医師セロン・G.・ ランドルフによる分析

環境汚染の影響がすぐに自然破壊となって現れはしないように、化学物質過敏症も人体内部でじわじわと進行して、やがてある日突然、各種のアレルギー症状となり現れます。

アレルギーという概念が提唱されたのは、20世紀初頭ですが、牛乳、卵、大豆による食物アレルギーが正式に認められるようになったのは、比較的最近です。
つまり、病気が存在しながらも、正式には病気として認められなかった時代が長らく続いていたのです。これは、近代西洋医学においては、原因や病変部位がはっきりしているものを病気と呼んでいるからです。

アレルギーがまだわけのわからない病気とみられていた約40年も前から、環境汚染物質とアレルギーの関係に注目したのは、アメリカの医師セロン・G.・ ランドルフです。彼は患者が訴える病状とその原因となる道の化学物質の関係を、膨大なデータの収集と分析によって突き止めるとともに、その化学物質を排除した特殊な環境制御施設に患者を入所させることで慢性疾患となっていたアレルギーが回復することを実証しました。。

無効量で発症する化学物質過敏症

薬理学(毒物学)における毒性試験では、まず有毒成分を抽出し、実験動物を使い投与量を増加しながらその作用を調査します。はじめに毒物ありきなのです。しかし、セロン・G.・ ランドルフの研究においては、毒物は未知なる「X」であり、それを身の回りの膨大な化学物質から絞り込むことがテーマにありました。これは気の遠くなるよな作業でしたが、結果として中毒量には達しないppb(10億分の1)~pp(1兆分の1)というごく微量の化学物質が、各種のアレルギー反応に深く関わっていることが判明したのです。

化学物質の生体への作用をその量からみると以下のようになります。

  • 無効量…化学物質過敏症
  • 薬用量…アレルギー
  • 中毒量…中毒
  • 致死量…致死

ここで注目すべき点は、薬理学(毒物学)的にいうと、化学物質過敏症は無効量において発症しているということです。無効量とは投与によって、毒性はもとより、薬効らしき生体反応も示さない、毒にも薬にもならず、人体がただ淡々と代謝するだけのわずかな量のことです。
これは、薬物とその生体反応の因果関係は、単純な比例関係にないことを示します。