月別アーカイブ: 2012年7月

古い絵画から剥落する絵具もまた有害

バレリーナの動きの一瞬をとらえ、それをパステルの柔らかな色調で表現したのは、印象派を代表する巨匠ドガです。線描を大切にし、大胆で奇抜なレイアウトや対象の瞬間を鋭く捉える優れた独特の目で、初期には歴史画や肖像画、発展期から円熟期には競馬、舞台、踊り子など都会的なモチーフや、日常生活に見られる浴槽など風俗的モティーフを描きました。
パステルは顔料にトラガカントゴムやアラビアゴム(天然ゴムとは異なる植物の分泌物で、造粘剤として使われます) などを混ぜて棒状に固めた画材です。
油絵具と違って乾くのを待たず、上から塗り重ねることができます。このパステルにヒントを得て、大正年間、幼児でも使いやすいようにパラフィンなどを加えてつくられたのが日本のクレヨンです。クレヨンが少し油くらいと感じた人も多いはずです。

ただ、クレヨンは重ね塗りができないので、その後まもなくクレパスが開発されました。クレパスとは日本のクレヨンとフランスのパステルの両方の長所を取り入れたことからのネーミングです。
水彩絵具には透明水彩と不透明水彩とがあります。児童用の絵具は合成染料が使われますが、耐久性が要求される専門家用のパステル、絵具(水彩用、油絵用、日本画用、版画用) には天然の無機顔料が使われます。天然の無機顔料の多くが岩石や鉱物から得ているのは、岩石や鉱物に含まれる金属が絵具の色に関係してくるからです。これらの絵具の中には、かなり毒性の強い金属を含むものがあります。古い絵画からはげ落ちる絵具の破片にも注意したほうがいいでしょう。

ハンダは有害物質

高分子化合物と合金

重要な手紙を配達途中で覗かれないように、かつて欧米では、ろうで封印して、印章を押す習慣がありました。これを封蝋(ふうろう) といいます。ろうで封印をするのがその当時のセキュリティとしては、有効だったのでしょう。

シュラック(ラックカイガラムシの分泌物)などの樹脂を精油で溶かして顔料などを混ぜたものが使用されていますが、昔はミツバチの巣からとった蜜ろう(高級脂肪酸とアルコールの固形エステル) が用いられました。
ろうを漢字で蝋と表記するのは、元々昆虫に由来する物質だったからです。なお、化粧品のクリーム剤としても使われるパラフィンというろうは、皮膚を刺激して発疹などのアレルギーを起こし、またパラフィンガンと呼ばれるガンの引き金となったりすることもある危険な物質です。
こうした有機化合物とは別に、金属材料を接合する合金もロウと呼び、鍼と書きます(ここでは区別するため、蝋= ろう、鎖= ロウと表記することにします)。金属を接合するロウの代表例はハンダです( ハンダを半田と表わすのは当て字ではありません。語源は地名とも人名ともいわれます)。
一般的なハンダは鉛とスズの合金で、融点が低いので電気ゴテや焼きゴテで簡単に溶かすことができます。ハンダが鉄や銅などの金属を接合するのは、スズ原子が鉄や鋼の金属結晶のすきまに入りやすいからです。したがって、スズの含有量が多いほど接合性がよくなりますが、最も低い融点(183度)を示すのは鉛38%、スズ62%のハンダです。

貴金属による皮膚炎は微量有害金属によるアレルギーか?

スズ・鉛にその他の金属を加えたハンダは、特殊な用途に使われます。たとえばカドミウムを加えたものは耐熱性にすぐれ、インジウムを加えたものは耐アルカリ性にすぐれます。金を接合するための金ロウは、金・銀・銅・亜鉛を主体とした合金、ブロンズ(青銅) などを接合するための銀ロウは、銀・鋼・亜鉛などを主体をした合金ですが、いずれも少量のカドミウムを含みます。イヤリングや指輪など、皮膚に接触する貴金属で金属アレルギーが生じるときは、微量の有害金属が原因とも考えられます。ネックレスをつけるとじんましんのようなものが首周辺にできるのは、アレルギーです。